AI(人工知能)の進化が加速する中、「LLM(大規模言語モデル)」という言葉を耳にする機会が増えています。
ChatGPTなどの登場で注目を集めるLLMは、今や業務効率化や新規事業の創出に欠かせない存在です。
そんなLLMの基本的な仕組みや注目されている理由を解説し、実際の企業での活用事例も紹介します。
この記事を読めば、「自社でLLMをどう活用できるのか」のイメージがつかめるようになります。
目次
LLM(大規模言語モデル)とは何か、わかりやすく解説
LLM(大規模言語モデル)とは大量の文章データを学習することで、人間のように自然な言葉を理解し、生成できるAIです。
近年の生成AIの進化を支える中心的な技術として注目されており、ChatGPTやClaudeなどもこの技術を用いています。
LLMの仕組みは、まず膨大なテキストデータを学習し、単語の並びや文の流れのパターンを予測。
そして学習した結果を用いて、「どんな単語がどの順番で並ぶと自然な文になるか」を判断し、文章を生成します。
LLMの特徴は、従来の言語モデルよりも桁違いに多いデータ量と計算量を使って、複雑な学習を行う点です。
これにより、AIは文脈をより深く理解し、人と会話したり文章を書いたりすることが可能になりました。
つまりLLMとは、言葉を「理解し、考え、伝える」力を持つAIであり、今後のビジネスや社会の在り方を大きく変える可能性を秘めています。
参照:
・「大規模言語モデル(LLM)とは? 仕組みや種類・用途など」株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト
・「LLM(大規模言語モデル)を分かりやすく解説!簡単な仕組み・種類・活用事例を紹介!」株式会社アスク
・「大規模言語モデル(LLM)とは?意味・定義 | IT用語集」NTTドコモビジネス
なぜ今、LLMが注目されているのかを解説
LLMが注目されている理由は、多様なタスクに対応できる汎用性と、文章生成における高い表現力にあります。
これまでのAIは翻訳や画像認識など、1つの目的に特化して開発されてきました。
しかしLLMは、文章作成・要約・プログラミング・情報整理など、複数のタスクを1つのモデルで処理することが可能です。
開発背景には、GPUなどのハードウェア進化とクラウド環境の普及があります。
これにより、大量のデータを学習できる環境が整い、より高性能なLLMが生まれました。
そしてSNSやインターネットの発展によって膨大なテキストデータが集まり、モデルの精度をさらに高めています。
複数のタスク処理を行えるLLMは単なるテキスト処理を超え、業務効率化・知識活用・顧客対応の自動化など、企業活動全体を変える可能性を持っています。
参照:
・「なぜLLMが注目されているのか、その革新の本質は”何でもできる汎用性” 」日経クロステック(xTECH)
・「LLMとは?なぜ流行っているのか? 」Rounda – Solution Home
・「LLMとは?大規模言語モデルの仕組みと特徴を分かりやすく解説」匠ソリューションズ株式会社
社内で導入が進むLLM活用事例を紹介
ここでは、実際に社内でLLMを導入している、以下の4社の活用事例について詳しく解説していきます。
● NTTドコモ:社内業務で生成AIを簡単且つ安全に使えるLLM付加価値基盤
● 三井住友海上とNEC:照会業務特化型のLLM
● 株式会社サイバーエージェント:独自の日本語LLM「CyberAgentLM3」
株式会社メルカリ:ユーザーの最適な行動を促す「メルカリAIアシスト」
株式会社メルカリ(以下、「メルカリ」)は、LLMを活用した独自のAI機能「メルカリAIアシスト」を導入し、一人ひとりのユーザーに最適なサポートを生成AIで実現しています。
「メルカリAIアシスト」は、出品や購入といった行動をよりスムーズに導くことを目的として開発されました。
第一弾として提供されたのが「出品商品の改善提案機能」です。
一定期間売れ残っている商品に対して、AIが過去の取引データをもとに分析を行い、売れやすくなるよう出品内容の改善を提案します。
たとえば「商品名の変更」や「説明文への追記項目」などを自動生成し、出品者はチャット形式で簡単に更新を進められます。
これにより、ユーザーは出品の手間を減らしながら、販売機会の向上を図ることができます。
さらに今後は、購入サポートやお困りごとの解決など、幅広い機能に「メルカリAIアシスト」を導入予定です。
LLMの導入によって出品・購入を最適化することで、メルカリは誰もが直感的に使える取引体験を創出し、フリマアプリとしての進化を続けています。
参照:
・「メルカリ生成AI/LLM 専任チーム䛾取り組み [2023.12]」株式会社メルカリ
・「メルカリ、生成AI・LLMを活用してお客さまの最適な行動を促す”メルカリAIアシスト”の提供を開始」株式会社メルカリ
NTTドコモ:社内業務で生成AIを簡単且つ安全に使えるLLM付加価値基盤
株式会社NTTドコモ(以下、「NTTドコモ」)は、独自の「LLM付加価値基盤」を開発し、社内業務における安全かつ効果的な生成AIの活用を実現しています。
これまで社内でのLLM導入には、機密情報の流出リスクや倫理的課題、専門知識への対応不足といった懸念がありました。
「LLM付加価値基盤」は、これらの課題を包括的に解決するWebアプリケーションです。
社員がチャット形式で生成AIを利用でき、誰もが安心してLLMを業務に取り入れられるよう設計されています。
特徴的なのは、社内文書を安全に参照できるRAG(検索拡張生成)技術の採用です。
RAGは社内データベース内で検索を行い、機密データを保持せずに必要な情報を参照することで、専門的知識に基づいた正確な回答を生成します。
さらに、倫理チェック機能では分類特化型のAIが内容を評価し、不適切な出力を未然に防止。
情報漏えいリスクに対しては、監査ログと個人情報検知による二重監視体制を整備し、セキュリティを強化しています。
現在、この基盤はオペレーター応対の品質向上や通信品質の改善など、ドコモグループ内の多様な業務で活用されています。
「LLM付加価値基盤」の機能拡充と運用改善を通じて、NTTドコモは、生成AIを活用した業務改革をさらに加速させるでしょう。
参照:
・「ビジネスの現場に寄り添うLLM基盤技術」NTTドコモ
・「ドコモ”LLM付加価値基盤”の狙い 生成AIの3つの課題を解消」BUSINESS NETWORK
三井住友海上とNEC:照会業務特化型のLLM
三井住友海上火災保険株式会社(以下、「三井住友海上」)と日本電気株式会社(以下、「NEC」)は、照会業務に特化したLLMを共同開発しました。
この取り組みは、照会対応の効率化を通して、業務品質と顧客対応力の向上を目的としています。
三井住友海上は2023年、社内生成AI基盤「MS-Assistant」を導入し、照会応答の自動化を進めてきました。
2024年4月にその高度化を図るため、NECの生成AI「cotomi」を基に共同開発されたのが、照会業務特化型LLMです。
このLLMは「Azure OpenAI Service」と連携することで、文書検索の精度が大幅に向上し、より正確な回答を生成できるようになりました。
大きな特徴は、約1.2万人の社員によるフィードバックを継続的に学習する仕組みです。
社員が実際の利用を通じてAIを育てることで、現場に即した柔軟な応答が可能となりました。
また、生成AIの課題であるハルシネーション(誤情報生成)には、明確な利用ルールを定め、全社員への周知を徹底することで対策を講じています。
今後は、保険約款やFAQデータの拡充に加え、代理店システムへの応用も進める予定です。
三井住友海上とNECは、生成AIの力で照会業務を革新し、保険業界全体の業務品質と顧客満足度の向上を目指しています。
参照:
・「照会応答機能の高度化に向けた業務特化型LLMを開発」三井住友海上
・「三井住友海上とNEC、生成AIによる文章要約技術を開発。事故対応業務に活用」AIsmiley
株式会社サイバーエージェント:独自の日本語LLM「CyberAgentLM3」
株式会社サイバーエージェント(以下、「サイバーエージェント」)は、日本語に特化した大規模言語モデル「CyberAgentLM3」を開発しました。
同社はこの技術を自社サービス「極予測AI」などにも応用し、生成AIを競争力の基盤として位置づけています。
サイバーエージェントはこれまで、2023年に初代「CyberAgentLM」と第2弾「CyberAgentLM2」を公開してきました。
今回の「CyberAgentLM3-22B-Chat」は、それらを基盤とせず、ゼロから独自設計で構築されたモデルです。
日本語の文法構造や言葉のニュアンスを深く理解できるよう最適化されており、日本語処理における自然さと精度の両立を実現しました。
日本語LLM性能を比較する「Nejumi LLM リーダーボード3」では、Meta社の「Llama-3-70B-Instruct」と同等の性能を記録し、国内トップクラスの実力を示しています。
SNS投稿や学術論文など多様な日本語データを学習することで、自然で一貫性のある対話を実現し、人間らしい応答が可能です。
チャットボットやカスタマーサポート、コンテンツ制作など幅広い分野で活用でき、Hugging Face APIやOllamaプラットフォームを通じて容易に導入できます。
「CyberAgentLM3」の公開は、国内における日本語AI研究と実用化の推進に貢献する取り組みとして注目されています。
参照:
・「独自の日本語LLM(大規模言語モデル)のバージョン3を一般公開 ―225億パラメータの商用利用可能なモデルを提供」株式会社サイバーエージェント
・「AIの発展をサイバーエージェントの競争力とするために」CyberAgent Way 公式オウンドメディア
・「CyberAgentLM3-22B-Chatの概要とその革新的な特徴」 株式会社一創
まとめ
この記事では、LLMの基本構造や注目されている理由、企業での活用事例について解説しました。
社内基盤の構築や照会業務特化型モデルの開発、日本語に最適化された独自LLMなど、企業ごとに多様なアプローチが進んでいます。
今後は、より高精度で安全に運用できるLLMの開発が進み、業界や職種を問わず、実務のあらゆる場面で生成AIが欠かせない存在になるでしょう。
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