国内建設業界のDX事例3選|建設業界のDX事例をわかりやすく紹介

建設業界は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少・働き方改革の推進もあり、DXの必要性が高い業界といえます。
依然としてレガシーなイメージがありますが、実際大手ゼネコンを中心に
DXが推進されています。 
この記事ではそんな建設業界の国内におけるDXの事例について紹介します。 

建設業界DXのトレンド

国策としても、国土交通省が2025年までに建設現場の生産性の2割向上を目指す「i-Constrruction」を推進しています。
DXの推進により工事日数の削減少人化を実現し、生産効率の向上を図るものです。

建設業界の生産プロセスには例えば測量施工検査がありますが、それぞれで実現が期待されるDXには以下のようなものがあります。

測量
ドローン等のUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)を活用した、3次元測量による少人化・効率化

ドローンの空撮の様子
https://www.pc-webzine.com/entry/2020/03/post-350.htmlより引用 

施工
ICT建設機械による施工精度・効率・安全性の向上

ICT建機のイメージ https://kensetsu-ict.com/column/4484/より引用

検査
3次元データの活用やペーパーレス化による検査の少人化・効率化

ARの活用による検査情報の視覚化事例:https://www.kensetsunews.com/web-kan/662904 より引用

特徴として、従来人が行っていた肉体労働や職人の経験則・技術の代替が大きな焦点となるため、
他の業界に比べて、新規性の高い技術や機械によるDXの検討が進んでいる点が挙げられます。
DX実現のための技術として、他にもウェアラブル端末やビッグデータ、アシストスーツ等も注目を集めており、今後もこれらの要素技術をもとに多角的にDXが行われていくことが期待されます。 

国内の建設業界DX事例1BIM導入と活用のためのクラウド導入

日本国内における建設DXの事例を見ていきましょう。
株式会社熊谷組では、積極的にDXが推進されています。
同社は
3DCAD※2BIM※3の作業環境にMicrosoft Azure(アジュール)によるクラウドデスクトップサービス※1Azure Virtual DesktopAVD)を使用しています。
(参考:
https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/azure_case_td-164/

同社では2013年からBIM(Building Information Model)の導入を積極的に推進してきました。
BIMの導入のためには当然のことながら、作業環境としてのデスクトップの拡充が必要になります。

しかし、デスクトップの必要台数の確保のためにスピード感が不足することから、同社はVDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップの仮想化)の導入に着手します。
そしてこの導入の動きは、新型コロナウイルスの影響でのテレワークの推進により急加速します。

BIM上の3Dモデルの操作には快適なネットワーク環境が必要になります。
当初はワークステーションから
VPN経由で接続することで運用してきましたが、3DCADBIMにおけるスムーズな操作が難しいという課題が浮き彫りになりました。


そこで一気にクラウドデスクトップサービスの導入の検討が進むことになりました。
建設DXのサポート事例を多く持つ、株式会社大塚商会による複数のVDIの導入提案を受け、同社内で使用しているBIMソフトArchiCAD※4でのPoC※5を通してAVDの導入を決定しました。
低コストと、単一の
OSに複数ユーザーが参加可能なマルチセッション機能がある点、端末数を削減可能な点が決め手になりました。

AVDを用いた作業環境のイメージ https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/azure_case_td-164/ より引用

この事例を見ると、単にBIMの導入という事例を通じても、ネットワークやクラウドサービス等複数の要素の検討が必要になることが分かります。 

※1 クラウドデスクトップサービス:仮想のサーバー上にPCを作成し、手元の PCからアクセスできるようにするサービス
※2 3DCAD:コンピュータ上の3次元空間で建物等の3Dモデルを描画することができるソフトウェア
※3 BIM(Building Information Model):建物の3DCADデータに加え、施工に関するデータが一元化されたソフトウェア
※4 ArchiCADGRAPHISOFT製のBIMソフトウェア https://graphisoft.com/jp/solutions/products/archicad
※5 PoCProof of Concept):実証実験 

国内の建設業界DX事例2:建設現場のICT 

清水建設株式会社では、「ICT-FULL活用工事」として、建設現場における一連のプロセスをICT化する取り組みを推進しています。

新東名高速道路川西工事では測量、設計、施工、検査、納品の一連の流れにおいて、3次元データを活用しています。

ドローン等のUAVによる測量と、それにより作成した点群データの活用により、施工の管理制度を確認する出来高測量や、仮設道路計画は8-9割の省力化が実現、VRの活用により移動時間が節減され、会議時間の8割の削減に成功しました。 

また作業の効率化だけでなく、ICT化により現場の安全性が確保されている点も重要です。
既に
40以上の現場で取り組みがなされており、今後他の現場に応用していくためのパッケージ化が必要になります。

また、今後様々な現場に応用していくうえで、システムや機械の活用に関するリテラシーの共有や、データを活用可能な環境構築も同様に重要になっていくでしょう。 

国内の建設業界DX事例3:スマートグラスの遠隔現場管理

株式会社奥村組ではスマートグラス※6の遠隔臨場(遠隔での現場立ち合い)の取り組みを行っています。

VC-CUBEコラボレーションを使用した作業 https://smbiz.asahi.com/article/14194220 より引用

建設現場においては発注者や担当者が、実際に現場に赴き確認や検査を行うのが一般的です。
特に現場が遠隔になる場合には移動時間等のコストが課題になります。
 

奥村組が導入したのが「V-CUBEコラボレーション」。
音声認識型のスマートグラスと会議システムが一体化した遠隔臨場ツールです。
 

実際に現場での使用に関しては、現場、事務所、発注者の監督官を会議システムでつなぎ、現場のスマートグラスの映像を共有します。
会議の進行に支障がないようにノイズキャンセリング機能も充実しており、重機が動く現場でもクリアに音声が聞き取れるようになっています。

また、遠隔で確認箇所等を書き込むと、スマートグラス上に表示されるため、現場に担当者がいなくても作業を円滑に実行することができます。

今後は熟練した職員による技術指導等への活用も進んでいくと考えられています。
単に
AR技術だけでなく、会議システムとも連動したソリューションによって建設現場が実際に変化していることがよくわかる事例といえます。

※6 スマートグラス:メガネ型のデバイスに様々な機能を搭載したもの 

建設業界DXの国内事例まとめ


建設業界の国内トレンドからその事例、課題について触れてきました。

建設業界特有の技術課題も多いですが、熊谷組の事例からわかる通り、ネットワークの課題等、DXの推進のためには、周辺の分野に関して知見のあるメンバー・チームによる推進が必要です。
よりデジタルリテラシーの高い人材、
DX推進の経験がある人材が業界に入っていくことが求められると言えるでしょう。

参考文献
[1]建設産業の現状と課題
https://www.mlit.go.jp/common/001149561.pdf

建設DX事例集 一般社団法人日本建設業連合会 インフラ再生委員会 20223
https://www.nikkenren.com/publication/fl.php?fi=1202&f=DXcase_202203.pdf 

令和3年度版国土交通白書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001410698.pdf 

不動テトラ×ICT
https://www.fudotetra.co.jp/solution/ict/ 

ツギノジダイ 人手不足もコロナ禍もチャンスに 音声認識型スマートグラス導入で上がる企業価値https://smbiz.asahi.com/article/14194220 

 

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