本記事では生成AIをより広範な業務で活用できるように機能を向上させるRAGとはどのようなものか、RAGを搭載したAIの活用事例を通して解説します。
国内企業における活用事例を中心に紹介するので、生成AIの回答精度がどのように向上しているのか、参考にしてみてください。
目次
RAGとは
RAG(Retrieval Augmented Generation)とは、生成AIに検索性能を組み合わせ、回答の制度を高めるための仕組みです。
日本語では「検索拡張生成」と訳されます。
あらかじめ学習したデータだけでなく、ユーザーから提供されたデータの中からも必要な情報を検索した上で、回答を生成できるようになります。
AIの用途に合わせたデータを追加で学習させられるため、これまでの生成AIよりも求める回答に近い内容を得ることが可能です。
参照:
・「企業におけるRAG活用事例10選」テックファームブログ
・「生成AIにおけるRAG(検索拡張生成)とは? 仕組みや活用例をご紹介」株式会社日立ソリューションズ
RAGの活用事例
次にRAGの国内企業における活用事例を8つ紹介します。
RAGによって、どのように業務が改善されているか参考にしてみてください。
● 朝日生命
● JR東日本
● AGC
● 東京メトロ
● 出光興産
● 東京ガス
● アサヒビール
それぞれ順番に見ていきましょう。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループでは、社内向けAIアシスタントツール「AMBC-GAT」にRAG機能を搭載しました。
まずは三井住友銀行の従業員向けに導入し、今後SMBCグループ全体への展開を検討しているようです。
「AMBC-GAT」では、社内規定や通達、業務マニュアルなど約130万件にわたるファイルを体系的にインデックス化し、AIが横断的に検索・参照できる機能を開発しました。
こちらは国内企業におけるRAG技術の事例として学習ファイルの量が最大級の規模となっています。
AIが回答する際には、参照した資料も併せて提示するため、根拠の確認も容易です。
参照:
・「社内向け汎用型AIアシスタントツール”SMBC-GAI”へのRAG技術を活用した社内情報検索機能の導入について」三井住友フィナンシャルグループ
朝日生命
朝日生命保険相互会社では、社内業務の効率化・生産性向上のためにRAGを搭載した生成AIの活用に向けて検証を開始しました。
同社では、2021年から本社業務の削減のためによくある質問とその回答をデータベース化したFAQシステムを構築し、現場社員からの問い合わせへの回答業務を簡略化しています。
しかし、今後の体制を見据え、さらなる業務効率化を目指してRAG搭載の生成AIを活用した照会回答システムの導入に至ったようです。
新たな照会システムでは、有人チャットを含めた3段構えで構築されており、まずは事前に登録したFAQを基にチャットボットが回答を行います。
事前登録されたFAQを基にした回答では解決しない場合、社内ドキュメントをRAGが検索し、生成AIが回答生成を行います。
これでも解決しない場合にのみ有人チャットへ移行することで、オペレーターの業務量削減を可能にしました。
なお、有人チャットで行われた回答内容は、生成AIによって自動で新たなFAQに登録されるようになっているため、自動回答の対応範囲を広げ、さらなる業務削減を図っています。
参照:
・「生成 AI を活用した照会回答システムを導入」朝日生命保険相互会社
JR東日本
JR東日本グループは、グループの経営ビジョン達成のスピードを速めるため、2024年6月から全社員へ社内向け生成AIチャットツールを展開しました。
同社では2023年から生成AIの活用可能性を模索するために、専門組織を社内に立ち上げ、独自の生成AIチャットツールを内製・試用を行っていました。
そこで、社内のDX推進に役立つことが確認できたため、既成のAIチャットツールを社員向けに展開し始めたようです。
また、社内文書を学習させたRAG搭載の生成AIについても、2023年11月から一部の部署で試用を始め、一定の効果が確認できたことから全社員への展開を目指して検討を行っています。
参照:
・「生成AIチャットの全社員展開及び生成AIの内製開発について」JR東日本:東日本旅客鉄道株式会社
AGC
AGCは、自社向け生成AI活用環境の「ChatAGC」に、社内データと連携できるRAG機能を搭載し、2024年から社員向けに展開しています。
これによって、開発部門においては、過去の開発や設計などの属人化されやすい技術情報へのアクセスが容易になることが期待されています。
他にも、営業情報を基に顧客ニーズを把握することで、新製品につながる着想を得やすくなる効果も見込んでいるようです。
また、営業部門においては、技術情報や開発中の製品について逐一情報収集できるため、顧客へアプローチを行う際にも役立つと考えられています。
参照:
・「自社向け生成AI活用環境”ChatAGC”に、社内データ連携機能を付与」AGC
東京メトロ
東京メトロは、顧客向けチャットボットとお客様センターの業務にRAGを搭載した生成AIの導入に向けて取り組みを進めています。
ホームページに設置された顧客向けチャットボットについては、あらかじめ登録されてた想定FAQを基に回答するもので、多様化する質問の全てに対応しきれなくなっていました。
そこで、公式サイトに掲載された情報などを自動で検索した上で回答を作成できるようRAGを実装し、回答精度を高めています。
また、お客様センターに届くメールでの問い合わせについても、一次的な回答をチャットボットが検索を行い回答案を作成することで、オペレーターの業務量を削減。
お客様センターに届く忘れ物に関する問い合わせについては、対応をメールからチャットボットへ切り替え、忘れ物の内容に合わせて会話を柔軟に変更し、顧客の入力手間を減らしています。
さらに、オペレーターの対応範囲が縮小したことで、忘れ物対応の業務量も削減につながっています。
参照:
・「鉄道会社初! 生成 AI 搭載のチャットボットが、お客様のお問合せに対応します! 合わせて、お客様センターの業務にも生成AIを活用します!」東京メトロ
出光興産
出光興産は、ウルシステムズの開発したRAG搭載の生成AIを2種類導入しました。
1つ目は、競合他社の製品を分析し、レポートを作成するAIです。
Web上や特許のデータベースを検索し、競合製品の情報を集め、自社が開発予定の新商材が優位性のあるものか分析してくれます。
2つ目は、問い合わせのサポートを行うチャットボットです。
製品について問い合わせを受けた際、過去に近似する問い合わせを受けていないかなど社内データを検索して回答案を作成してくれます。
自社固有のナレッジを活かした回答を短時間で生成できるため、業務効率化につながっています。
参照:
・「ウルシステムズ、出光興産の生成AI活用を支援」ULSコンサルティング
東京ガス
東京ガスは、専門性の高い業務を支援するための社内ツールとして、RAG搭載のチャットツール「AIGNIS-chat」を独自に開発しました。
「AIGNIS-chat」では、社内に蓄積された情報を参照して社員からの質問に回答するため、社内でしか使用しない専門用語を含む質問にも対応可能です。
同社では、2023年度から生成AIチャットツールをグループ社員3,500名以上に展開しています。
今回開発した「AIGNIS-chat」についても、既存ツールのユーザーから順次利用対象者を拡大していく予定です。
今後においても、従業員の生産性向上や新たな価値創出に向け、機能の拡充を目指しているようです。
参照:
・「生成AIを搭載した社内アプリを独自開発・利用開始」東京ガス
アサヒビール
アサヒビールでは、Azure OpenAI Serviceを用いたRAGによる社内情報検索システムを導入しています。
このシステムは株式会社丹青社が提供する「saguroot」を基にしており、PDFやWord、PowerPointなど様々な形式の資料をファイル名だけでなく、ファイル内の文章や画像を含めた複合的な検索が可能です。
単純に検索するだけでなく、検索結果にはAIが資料内容を100字程度に要約して表示してくれるため、検索結果に表示されたファイルを1つずつ開いて内容を確認する手間が省けます。
また、Azureを使用しているため、社内データをAIの学習に使用しても他者へ回答する際に情報漏えいする心配がないのもポイントです。
参照:
・「生成AIを用いた社内情報検索システムを導入」アサヒビール
・「ファイル管理を効率化│ナレッジマネジメントツールsaguroot」丹青社
まとめ
今回はRAGを搭載した生成AIの国内企業における活用事例を通して、RAGとはどのようなものかを見ていきました。
RAGによって生成AIの回答内容を利用目的に沿ったものにしやすくなるため、業務効率化により寄与するようになるでしょう。
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