オープンイノベーションは、日本で注目されているビジネスモデルです。
DX化を急ぐガス業界においても「オープンイノベーション」が推進されています。
当記事では、ガス業界の現状と課題やオープンイノベーションの導入メリット、ガス業界オープンイノベーションの事例を紹介します。
目次
ガス業界の現状と課題
ガス業界は、2017年にスタートした都市ガスの自由化による販売競争と、環境問題に関する脱炭素の課題を抱えています。
販売競争は、オール電化の影響でさらに激化し、顧客確保のため各ガス会社は電力とのセット販売や生活関連サービスも提供することになりました。
また、ガスは温室効果ガスである二酸化炭素を多く排出するため、環境問題への対応も欠かせません。
そこで水素を活用し、CO2をメタンガスへ変えて提供するなど、再生可能エネルギーの導入を進めています。
その他、植林や森林保護、CO2排出ゼロに向けた技術開発など、脱炭素問題への取り組みもみられます。
参照
ガス業界、自由化と脱炭素が課題 公共性持ちつつ競争【業界研究ニュース】
ガス業界の抱える4つの課題と今後の将来性【企業ごとのIR情報も紹介】
DX推進にオープンイノベーションを導入するメリット
DX化とオープンイノベーションの2つの取り組みには、相乗効果が期待されます。
2018 年 9 月に経済産業省が発表した「DX レポート」で、DX が進まなければ「2025 年以降、年間最大 12 兆円の経済損失が生じる可能性がある」と言及されたことで、DXの推進が急がれています。
しかし、経済産業省が発表した「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート(2020 年版)」によると、ガス業界のDX化は他業界に遅れていることは明らかです。
そもそも国内企業のDX化には、既存システムの維持、保守に資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術への投資ができないといった問題が指摘されています。
そこで注目されたのが「オープンイノベーション」です。
オープンイノベーションとは「外部の技術を取り入れて研究や技術開発を進め、創出したイノベーションも外部に向けて提供する」という概念で、2003年に経営学者ヘンリー・ウィリアム・チェスブロウ氏が提唱しました。
それまで自社の技術を保護し、独自に開発を進めていた「クローズドイノベーション」とは相反する概念です。
オープンイノベーションを活用すれば、自社が持たないノウハウを獲得でき、短期間でイノベーションを起こすことが可能です。
また、外部の知見や技術を活用するため、開発費を抑えやすいといったメリットもあります。
ガス業界においても、外部の知見を取り入れることは、新たなサービスや技術開発を早期に実現できるだけではありません。
自社単独の開発では得られないデータやノウハウが獲得でき、DX推進の加速が期待できるでしょう。
参照
経済産業省「産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について」
NEDO「オープンイノベーションの重要性と変遷」
ガス業界のオープンイノベーションの取り組み事例
ガス業界のDX化は、オープンイノベーションとともに推進するメリットについて解説しました。
次に、ガス業界のオープンイノベーションの事例を4つ紹介します。
東京ガス「TGオクトパスエナジーの設立」
「TGオクトパスエナジー株式会社」(以下、TGOE)とは、東京ガスと英国のオクトパスエナジー社(以下、OE)が共に設立した合弁会社です。
OEは独自開発した統合ITプラットフォーム「Kraken」を活用し、英国でエネルギー供給サービス開始後、わずか5年で200万件を超える顧客を獲得しています。
東京ガスは、OEが保有するノウハウの習得を目的とし提携しました。
Krakenの特徴は、最善の顧客対応を可能にするとともに、幅広いニーズに合わせた電気料金・サービスメニューをスピーディーに提供できることです。
また、Krakenへは在宅ワークでも自身のPCからアクセスできるため、コロナ禍においても顧客からの電話やメール、SNSからの問合せにもスムーズに対応し、信頼を得ることに成功しました。
TGOEは、日本仕様のKrakenを用いて、他の企業とは異なる「新たな顧客体験」の提供を目指しています。
東邦ガス「AI地域冷暖房(通称 AIちれい)」
東邦ガスは、株式会社日建設計、株式会社日建設計総合研究所、住友商事マシネックス株式会社、株式会社アラヤと「AI地域冷暖房(通称 AIちれい)」を開発しました。
地域冷暖房は未利用エネルギーを活用し、一定地域内の建物群に冷暖房用のエネルギーをまとめて製造し、地域の複数建物に地域導管を通して供給します。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、CO2削減効果が期待されるシステムです。
しかし、国内の地域冷暖房は高度成長期の大気汚染対策で作られたものが多く、省エネ性能の低下が課題となっています。
また、CO2削減に向け、エネルギーの提供を需要に合わせて行う必要がありますが、人的労力でオペレーションすることは困難な状況です。
今後、環境への配慮も踏まえ、既存インフラと開発予定のエリアの地域冷暖房の整備が不可欠でしょう。
「AIちれい」は、AIによって上記の課題解決を目指します。
AIプログラムはシステムに、運転データを読み込ませることで運用が可能なため、短期かつローコストでCO2削減の実現が可能です。
熱量・送水量需要予測AIについては、過去のデータを予測する模擬運転時に、熱需要量を99%予測できることが確認されました。
「AIちれい」は、カーボンニュートラルなまちづくりへ向けて大規模開発ビルや病院などの熱源設備の設置も想定しており、東邦ガスは今後も日建設計の技術も活用し、CO2削減を目指します。
参照
AIでCO2やコストを削減する「AI地域冷暖房(通称 AIちれい)」を開発
大阪ガス「強風予測システム」
大阪ガスと、西日本旅客鉄道(JR西日本)は「強風予測システム」を共同開発しました。
同システムは、大阪ガスの高解像度気象予測結果データをJR西日本が開発したAIモデルで解析し、24時間後までの風速や風向を予測するものです。
2022年6月よりJR西日本湖西線沿線にて試験導入されています。
大阪ガスの気象予測への取り組みは、2008年に遡ります。
独自のシステムで気象予測やAIの活用による精度向上に取り組み、2018年に気象予報業務の許可を取得しました。
2019年には大阪ガスとJR西日本は強風予測に関する共同研究をスタートし、湖西線沿線において従来よりも精度の高い強風予測ができるシステムの開発が可能となりました。
大阪ガスは、今後、風による影響を受けやすい他の路線や鉄道会社、道路関係事業者などへシステムの提供も視野に入れています。
将来的には、強風時の列車運行の安全性向上や、行輸送などを利用者へのスムーズに周知をできることを目指し、検証を進めるということです。
参照
大阪ガス プレスリリース
西部ガス「ドローンを利用したインフラ点検」
西部ガス株式会社は株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下、JIW)と業務提携し「ドローンを利用したインフラ点検ソリューション」を行っています。
日本社会の課題である労働力不足は、公共インフラの老朽化、インフラ維持にも影響を与え、ドローンの活用は労働不足の解決策として、注目されているのです。
JIWとの業務提携では、早期の現場への導入を目指して西部ガスの施設点検業務にドローンを活用し、点検結果の解析をするAIを2社で強化しました。
西部ガスは、グループ中期経営計画「スクラム2022」で、新たな事業への参入も視野に幅広い事業領域の拡大を掲げています。
今後は、業務提携から得られたノウハウを生かし、他社への点検サービスを提供など、新たな事業拡大を目標に掲げています。
参照
ドローンを活用したインフラ点検ソリューションを提供する 株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークとの業務提携について
まとめ
ガス業界のオープンイノベーションの事例は、インフラの整備、顧客サービス、環境問題に関わるものまで多岐にわたります。
しかし、このようなソリューションは自社の力だけでは、成しえなかったのではないでしょうか。
また、DX化で生じる変革には、オープンイノベーションが必要であり、自社にとってもメリットがあります。
技術を独占する「クローズド」の概念は、企業の成長の妨げとなりかねません。
今後、ガス業界は従来のインフラ事業にとどまらず、オープンイノベーションによる様々な事業の展開が期待されます。
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