飲食業界は店舗経営に関わる様々な業務を、外食産業で働く人たちに支えられています。特に日本の居酒屋文化は独特で、海外で同じ雰囲気を出せるお店はないのではないでしょうか。
その理由は文化的背景にあります。
一般的に日本人は仕事中に本音を言わないと考えられているため、飲みの席がそれを補う役目を果たしていました。
海外の人は程度の差はあるものの基本的に仕事中でも本音で話すのが一般的なので、飲み会で変わる日本人を不思議に感じることもあるようです。
そんな日本とは異なる文化的背景を持つ海外の飲食業界、外食産業ビジネスはDXでどのように変化しているのでしょうか?
本記事では、当メディアを運営するストラテジーテック・コンサルティング編集部の海外担当が、海外の外食産業、飲食業界DX事例をご紹介します。
目次
飲食業界DXを支える海外レストランテック
長い間アナログ形態が続いていたレストラン、外食産業はパンデミックを機にデジタルシフトしています。
スイスのEHLグループの記事によると、レストランテックのトレンドは7つあります。
- オンライン注文とデリバリー
- 非接触型決済(コード決済)
- オンライン予約システム
- デジタルキッチンボード(厨房向けデジタル掲示板)
- 自動在庫管理ソフトウェア
- メニューのQRコード化
- 高品質空気清浄テクノロジー
中国のコード対応が進んでいるのは有名ですが、欧州各地も着々と導入が進められていることがわかります。
国内でも飲食、外食産業のデジタル化が進んでいますが、海外のケーススタディにも目を向けてみましょう。
参照:)7 restaurant technology trends to watch in 2021/EHL insights
飲食業界DXを変えた海外ソフトフェア事例
続いて、海外の飲食店マーケティングトレンドについてご紹介します。
日本ほど人口が密集していない海外の各地では、飲食店がターゲットとするお客様の居住エリアがよりローカル化しています。行動制限も行われる中、以前より地域に根差した飲食店経営が求められた結果です。
売上がパンデミックで減少すると、支出を抑える施策が必要になります。そこで、飲食店のオンライン広告の運用にも変化が訪れました。
状況の変化にいち早くあわせて開発されたソフトフェアが、スイス発祥のNanosです。
飲食店がオンライン広告を出稿する場合、以前は広告代理店を通して運用しているお店がほとんどでした。
そこでNanosは、Google、Facebook、Instagram広告を飲食店スタッフ自ら運用できるように一元管理できるソフトフェアを開発しました。飲食店側で運用管理ができるようになると、広告宣伝費の削減に繋がります。
運用経験の浅いお店スタッフが管理するには、使いやすくなくてはなりません。そのため広告文の入力、予算や期間の設定、画像設定も視覚的に操作できるように「UX」にこだわり開発されました。
広告キャンペーンをほんの数ステップで出稿すると、Nanosは類似する過去の店舗データを参照してキャンペーンに最適なターゲットを探します。特定の広告キャンペーンは潜在顧客へのアプローチにも向いています。
Nanosは複数の国の言語で効果的に運用できる点も忘れてはいけません。各広告を配置する場所を選ぶこともできます。予算に応じたキャンペーンの運用最適化も自動なので導入の壁は高くありません。
もちろんキーワードの最適化も自動対応してくれます。広告テキストはAIが提案したものから選ぶこともできます。PPCだけでなくSNS広告も対応できるよう既に実装されているので注目です。
参照:)Nanos
飲食業界のDX海外事例4選
早速、Nanosを実際に導入した事例3つと、パンデミックを機にテクノロジーを導入したカナダのレストラン事例をみていきましょう。
海外の飲食業界DX事例①:イギリスのフィッシュバー店、CTR6%を実現
1つ目の海外事例は、イギリスで魚のフライ料理を提供するフィッシュバーです。
フィッシュバーはNanosに22ポンドを支払い、FacebookとGoogle広告の運用テストをすることに決めました。
Nanosは過去の類似する広告キャンペーンデータを参照し、ターゲットやキーワードを最適化しました。割引料金で運用できたため、より多くの潜在顧客にリスティング広告を表示させることに成功したのです。
運用期間はたった2日でしたが、成果に繋がるものでした。
広告は5,153人に届き、CTRは6.17%とかなり高い結果となりました。このCTRは業界平均2%を大幅に上回っています。
海外の飲食業界DX事例②:アメリカにあるインド料理店、驚異の表示回数
2つ目の海外事例は、アメリカにあるインド料理レストランのWeb広告についてです。
インド料理レストランは、デリバリー予約がWebから可能であることを宣伝することにしました。
魅力的な料理の写真を使い、FacebookとInstagramに広告を出稿して運用を開始したのです。
キャンペーンは合計4本で、アカウント運用期間は2ヶ月間でした。
Facebook広告は全体平均を上回るCTRを確保、比較的クリック率が低いと言われているInstagram広告も、好調なCTRとなりました。
表示回数も多い状況で高CTRを維持するのは難しいことですが、このインド料理レストランは見事に運用できたのです。
運用期間が長ければ長いほど、キャンペーンを最適化できることを証明しました。
海外の飲食業界DX事例③:ブラジルにある寿司店、低予算運用の結果
3つ目の海外事例は、ブラジルにある寿司レストランのケーススタディです。
この寿司レストランにはWebサイトやFacebookビジネスページがありませんでした。
そこでデリバリーをWeb広告でどのように宣伝するかが課題のひとつとなっていました。
課題を解決したのは、Nanosの無料ツールです。
LPを作成し、Nanosを介して広告を出稿しました。
非常に低予算だったにも関わらず、741回のクリック数でCTRは4%を上回ることができました。
様々な料理の組み合わせに、ワインとデザートがついたのがポイントではないかと振り返っています。
Nanosがデータから導き出したターゲット、アジア料理が好きで特にお寿司を食べたいユーザー向けに最適化できた結果です。
海外の飲食業界DX事例④:カナダのレストランがDXを推進した結果
中小企業の経営者と深い関わりのあるカナダ銀行事業開発部門のBDC(Business Development Bank of Canada)が、カナダのレストラン経営について語っています。
カナダ国内でも大きな都市、トロントやモントリオールで複数のレストランを展開している経営者は、パンデミックの最初の6週間で2つのレストランを閉鎖しました。
まだ営業を続けていた店舗をテイクアウトとデリバリーに特化させた結果、そちらの売り上げが徐々に伸びていきました。
お客様の消費動向の変化に、レストラン側は早急な対応が求められたのです。
本部の管理業務が減ったので、マネージャーもキッチンに立ち、デリバリー用に提供する商品を準備しました。そうして次第に医療従事者に食事をプレゼントする活動へと発展していきました。
また、フードバンクの食材を使用して難民申請者を助けることにも注力することができたのです。
このように次々と方向が転換した理由に、「パンデミックの対処法を誰も知らなかった」ことが挙げられます。
混乱を極める状況で、レストランは決済機能付きメッセージアプリを活用する決断をしました。
3つのコミュニティグループをアプリ内で作り上げ、店舗の宣伝、注文、支払いをシームレスに繋げることに成功したのです。
同時にWebサイトも更新してオンライン注文と支払いも強化させました。
常連のお客様向けにInstagramやFacebookを活用し、試食も含めた料理情報を提供しています。メッセージアプリを有効活用し、決済まで繋げることで、顧客満足度が向上し売り上げが伸びたDX事例です。
参照:)How restaurants are adapting to the COVID-19 pandemic
飲食業界DXの人手不足にヒューマンクラウド
どの業界も離職率は課題のひとつになっていますが、飲食業界は特に離職率が高い傾向にあります。
適切な人材の確保と配置はレストラン経営にとって欠かせません。
そこで強い味方となっているのが、ヒューマンクラウドを活用した人材確保戦略です。
ギグエコノミーは単発労働とスキルシェアの大きく2つにわけられますが、こうしたギグワーカーを登用した人材確保方法をヒューマンクラウドと言います。
たとえば単発労働の代表にはUber、スキルシェアの代表にはFiverrが挙げられます。
こうした労働力は、特に繁忙期の人手不足を補ってくれるでしょう。
ヒューマンクラウドにはまだまだ課題もありますが、店舗側がフルタイムスタッフを探していた場合、ギグワーカーの中から潜在的な候補人材をみつけることもできます。
参照:)The Gig Economy Could Help Your Understaffed Restaurant/On the Line
飲食業界DXの海外事例まとめ
世界規模で外食産業は大きな変革期を迎え、より地域に根差した経営に注目が集まっています。
料理のデリバリー宣伝から人材確保手法のヒューマンクラウドに至るまで、飲食業界のDXは着実に進化しているようです。デジタルシフトが進んでいるとはいえ、まだ手つかずの状態で経営している企業もあるでしょう。
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