近年、世界中で多く導入されているSAP ERP製品は、どのような目的で導入され、そして企業にどういった形で活用されているのでしょうか。
そこで今回は「SAP ERPがどういった効果を生み出しているのか」を導入している企業の事例からご紹介いたします。
また、記事終盤には、導入費用やSAP導入コンサルタント、SAPのクラウドERPについても触れていますので、ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。
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目次
日本のSAP導入企業数
事例を紹介する前に、日本でSAPを導入している企業はどのくらい存在しているのでしょうか。
日経クロステック※1の調べによると「SAPジャパンは公式にSAP ERPの導入社数を公表していないが、日本国内に2000社程度あるとみられる。」とされています。
一般的に、SAPを導入するためには、大規模プロジェクトとなり、工数・費用というのは大企業を対象としているものでしたが、現在は、中小企業向けにも導入サポートを広げています。
また、SAPジャパンはこれらに対し、販売の拡大を狙って営業部門の刷新を行い、様々な企業に導入できるように体制を整えています。
更に、SAPジャパンが公表している「パートナー別SAP認定資格コンサルタント資格取得数」※2によれば、毎月資格を取得しているSAPコンサルタントが増えています。
それにより、導入を専門とする人材の拡充から、今後もSAPを導入する企業は増えていくと考えられます。
参照:)2025年問題、SAPユーザー2000社に迫る
参照:)パートナー別SAP認定コンサルタント資格取得数
大手企業のSAP導入事例4選
世界中の商取引の77%は、何らかのSAPシステムを使っているデータがあるほど、今や世界標準となったSAP製品。
多言語・他通貨・各国の法令などに対応をしており、グローバルに活用できます。
世界トップの名だたる企業が使用しているため、各国とのビジネス取引がスムーズに進み、信用度が上がる等の利点があります。
本トピックでは、SAP ERPの導入事例について紹介します。
SAP導入事例①:ヤマシンフィルタ株式会社
建機用フィルタを中心にビジネスを展開する「ヤマシンフィルタ株式会社」は、東証一部上場をキッカケに基幹システムの刷新に着手しました。1989年から世界8か国に現地法人を展開し、世界中どこにでも建機用フィルタを提供できるようにネットワークを構築していました。
それまでの使用していた基幹システムでは、中小企業向けのグローバルパッケージのため、事業の成長に対応できない問題が浮上したのです。したがって2016年6月からSAP ERP導入プロジェクトがスタートしました。結果、新規事業の対応と世界に広がる生産拠点を見直すことで成長スピードを向上させることに成功しました。
SAP導入事例②:株式会社シード
コンタクトレンズメーカー大手企業「株式会社シード」は、2017年にSAP ERP(会計、人事、販売、購買/在庫)のモジュールを導入を追加しました。事業の海外展開を視野に入れ、多言語/他通貨対応している点と、コンタクトレンズ製品の特徴を管理できるデータベース構造を目的としてSAPを選びました。結果として、複数の効果を得ることに成功しました。
例えば、「日々の発注処理が自動化されて時間削減につながった」「システム部門が対応していた集荷データの処理もなくなり負担軽減につながった」と嬉しい声が上がったようです。同社は、今後様々な自社システムをSAPに統合し、ビジネス基盤を常にアップデートしていく考えです。
参照:)導入事例「株式会社シード」
SAP導入事例③:トーハツ株式会社
警察や消防の水上パトロールにも活用されている、船外機のパイオニア「トーハツ株式会社」では、コスト削減を目的として、全業務の最適化を行うためにSAP ERPの導入を開始しました。5つのモジュール導入をトップダウンで決定し、1年かけてビックバン稼動を成功させました。
SAPにした決め手は「120か国を超える海外輸出率のため、他通貨対応とデータ統合に強い機能」を評価したそうです。SAP ERP導入により同社は、目的としていた業務システムの最適化に成功。同基準で共通データを元に、各部署の意思決定・活動に貢献しました。
参照:)導入事例「トーハツ株式会社」
SAP導入事例④:小林化工株式会社
ジェネリック製品を含む医療用医薬品の販売を行う「小林化工株式会社」は、品質管理を徹底した最新の工場を建設し、年間10億錠の医薬品を生産・供給を行う会社です。2017年日本政府が打ち出したジェネリック医薬品の使用割合の増加を発表し、より大規模生産に対応できる体制が必要になりました。
そのため、グローバル製薬業界の実績が高いSAP ERPの導入を開始しました。結果、業務面の二重入力やミスが減り業務の無駄が減りました。
参照:)導入事例「小林化工株式会社」
SAP S/4HANA導入事例6選
本トピックではご紹介する「SAP S/4HANA」は「SAP ERP」の次世代ERP製品です。
特徴は、速度にこだわったデータ処理や、機械学習を搭載し商品の在庫消費予測などが行えます。
過去のデータになりますが、2019年時点では、世界中で1万2000社が導入しています。
SAP S/4HANA導入事例①:NECグループ
2020年NECグループは、DX推進のため、後継機であるSAP ERPからSAP S/4HANAへの刷新を決めました。当時、基幹システムとデータの分断があちこちで起きているレガシーシステムでは、攻めのDXができない課題がありました。コロナ禍ではありましたが、無事プロジェクトを成功させ、デジタル基盤と基幹システムのシームレスな連携を達成。経営のスピードアップや新しい経営ニーズの対応に生かしています。
参照:)導入事例「NECグループ」
SAP S/4HANA導入事例②:味の素食品株式会社
味の素グループの調味料・加工食品の製造・包装を扱う「味の素食品株式会社」は、発足と同時にSAP S/4HANAを導入。統合前の会社で使用していたERPパッケージをまとめて統合する大規模なプロジェクトになりました。導入ベンダー、各社より集められた担当者たちの奮闘の末、「シンプル」を目標とした導入を成功させました。その結果、従来のERPでは1時間かかっていたバッチ処理が10分に短縮し、負担の大幅な改善が見られました。現在は、維持保守段階に移行し、グループ全体に展開していく方針です。
参照:)導入事例「味の素食品株式会社」
SAP S/4HANA導入事例③:東京化成工業株式会社
100年以上続く、試薬開発を主力ビジネスとした化学メーカーです。世界各国に拠点を設置し事業を展開しています。データ・ドリブン経営を目指して、ブラックボックス化した情報システムを刷新するために、SAP S/4HANAの導入を決めました。
世界各国からメンバーを集めて行うグローバルプロジェクトのため、会議の時間管理などの苦労点は多かった様です。導入ベンダーとコンサルタントの啓蒙活動の効果もあり、稼働を開始させることができました。システムのシンプル化によるデータ・ドリブン経営やマンパワーに頼っていた業務を効率化することができました。
参照:)導入事例「東京化成工業株式会社」
SAP S/4HANA導入事例④:カゴメ株式会社
食品・飲料の大手総合メーカー「カゴメ株式会社」は、SAP ERPによる基幹システムを運営していましたが、稼働アドオンが1000を超えシステムの複雑化を引き起こしていました。成長するために、より高い効率化を求めてSAP S/4HANAへの移行を決意。
同社の移行ケースは「選択と集中」をテーマに行われました。企業価値を決める領域は、業務側にシステムを合わせ、その他の管理業務は、システムに業務を合わせて標準化していくことで、人的リソースの最適化を図りました。結果として年間4.6万時間もの効率化が見込まれています。
参照:)導入事例「カゴメ株式会社」
SAP S/4HANA導入事例⑤:本多通信工業株式会社
電子部品の製造や販売、システム、ソフトウェアの開発を行う「本多通信工業株式会社」は、主な製品のコンバートに伴い、ビジネスプロセスが変化したため、稼働中の基幹システムでは対応しきれなくなりました。
会計、生産などの複数のシステム処理をSAP S/4HANA内で完結させ、リアルタイム連携を経営に生かしていく狙いです。また、DX推進のためSAP S/4HANA を活用してIoTやAIの技術を駆使し、工場の稼働率を高め、海外グループにも横展開していく方向性を持っています。
参照:)導入事例「本多通信工業株式会社」
SAP S/4HANA導入事例⑥:株式会社アークス
北海道や東北地方を中心に展開する地域密着型のスーパーマーケットチェーンです。売上高1兆円を達成するために、グループ内で4つに分かれていた基幹システムを、データ処理・分析に優れたSAP S/4HANAでの統合を決意しました。
食品SM業界では、導入事例が少なくプロジェクトは難しいものとされましたが、苦難を乗り越え3年かけてカットオーバーしました。それにより各社・各店で同じ鮮度のデータを得られることで、売上高を上げるためのDXの基盤を完成させることができました。
参照:)導入事例「株式会社アークス」
SAP導入費用はどのくらいかかるのか?
多種多様な企業が活用しているSAP ERP製品は、グローバルビジネスの活用や正確なデータ処理を目的として導入が進められています。
そこで気になるのが、「導入費用がどの程度になるか」ということです。
ずばり現在のSAP ERP製品の導入費用はピンキリであることが正直なところです。
以前のSAPの導入はクライアントのニーズに合わせてアドオンを追加して開発期間が長引くことによって、費用の増加が伴いました。
しかし、現在の主力製品SAP S/4HANAは、様々なクライアントに対応できるテンプレートが備わっているため、半年ほどで導入が完成する場合もあり、そのコストは従来のコストより10分の1まで下がっている事例もあります。
したがって、一概には判断が難しい状況です。
そこで、企業の情報システムの方は、SAPを専門とするコンサルファームやITベンダーに見積もりをすることが最も合理的でオススメです。
参照:)「SAP S/4HANA」の導入とトータルコストはいくらぐらいなんですか?【前半】
SAP導入コンサルタントになるには?
本記事では、SAP ERPの導入事例を紹介させていただきました。
会社の重要なビジネス基盤になる基幹システムは、どの企業も、導入に当たって実績・信頼のあるSAP導入コンサルタントを求めていますね。
SAP導入コンサルタントとは、クライアント企業の課題やニーズに寄り添い、SAPを活用して経営の手助けをするコンサルタントを指します。
以下記事にてSAPコンサルタントについて詳しく紹介しています。
ご興味ある方はぜひのぞいてみてください。
今後注目!SAPのクラウドERP
進化が止まらないSAP ERP製品。
2017年には、最新クラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」を販売しました。
オンプレミス型を数年で、逆転すると分析されているクラウドバージョンのERPです。
● テーブルの削減などによる大量データのリアルタイム処理の実現
● マスターの統合
上記の改善が図られました。
また、3か月ごとに機能をアップデートし、人工知能や機械学習などの最新を使用することができます。
そして、サブスク型に切り替えることでクライアントが柔軟にクラウドERPを選べるようになりました。
ユーザーは自社のコアビジネスに集中できるメリットがあります。
より詳しく「SAP S/4HANA Cloud」について知りたい方は、下記の記事にて紹介しています。
ぜひ参考にしてみてください。
SAP ERPの導入事例についてまとめ
今回は、企業別にSAP ERPの事例10選ご紹介しました。
今後も多くの導入事例が増えていくように、SAPの進化、可能性は無限大です。
業界を問わず多くの業種で活用されるSAPソリューションには目が離せません。
読者の皆様にとって有益な情報になれば幸いです。
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