自治体システム標準化について ~20業務やスケジュール、メリット・デメリットをわかりやすく解説~

国が2025年度末までの統一化・標準化を目指している自治体システム

しかし、標準化の対象となる基幹業務が多いことなどを理由に、自治体やベンダに対して施策の理解が進んでいません。

そのため本記事では自治体システム標準化について、国が基幹業務として定める20業務や標準化のスケジュール、メリット・デメリットについて分かりやすく解説していきます。

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自治体システム標準化とは

自治体システム標準化とは、住民の利便性向上や行政運営の効率化のため、地方自治体の基幹業務システムを全国で統一・標準化する国の施策です。

自治体では行政手続きのデジタル化が進められていますが、その進捗は自治体によって差があり、住民が均一的なデジタルサービスを利用できないという問題が生じています。

さらに現状では、自治体ごとにシステムのデザインや業務フロー等の仕様が異なります。

現状のままデジタル化を進めるためには、自治体がそれぞれのベンダにシステム開発を依頼する必要があり、多大な開発コストがかかってしまいます。

こうした背景から国は、地方自治体の基幹業務システムの統一・標準化を地方公共団体に向けた施策として打ち出しました。

そして国はこの標準化を進めるべく「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(以下「基本方針」と言います。)を策定し、以下の5つの目標を掲げています。

  1. 標準化基準の策定による地方公共団体におけるデジタル基盤の整備
  2. 競争環境の確保
  3. システムの所有から利用への移行
  4. 迅速で柔軟なシステムの構築
  5. 標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行とトータルデザインの実現

この目標が達成された暁には、全国の自治体の画一的なデジタル化が進むことが期待されます。

また標準化によって特定の業者に依存(ベンダロックイン)する状況が解消され、様々なベンダが参入できるようになり、技術や価格面での競争が生まれるため、自治体はより良いサービスが利用できるようになるでしょう。

そして今まで自治体ごとに所有していたシステムがクラウドの利用に移行されることで、法令や制度が変わってもベンダが迅速に対策でき、すぐに住民サービスに反映させることが可能になります。

以上のことから自治体システム標準化は、自治体や住民双方の利便性向上を目指す国の重要な施策と言えます。

参照:
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律 e-Gov法令検索
地方公共団体情報システム標準化基本方針 デジタル庁
地方公共団体の情報システム標準化に向けた課題 日本総研

標準化を目指す基幹業務(20業務)システムについて解説

基本方針で標準化を目指す業務を基幹業務とよび、2021年2月に17業務、2022年1月に3業務の計20業務を標準化の対象と定めました。

これら基幹業務に対して各自治体が現在利用しているシステムを標準化し、国が提供するクラウドサービス(ガバメントクラウド)上に移行できるよう、国は標準仕様書を定めています。

標準化の対象としている基幹業務は、以下の通りです。

参照:
地方公共団体情報システム標準化基本方針 デジタル庁

住民基本台帳関連業務

  • 住民基本台帳システム
    住民票の編成や管理を行うため、住民の氏名・生年月日・住所等を記録、管理するシステム
  • 国民年金システム
    20歳以上の住民が加入する国民年金に関する業務を管理するシステム
    ※標準化の対象は自治体が行う法定受託事務及び協力連携事務
  • 選挙人名簿管理システム
    選挙人名簿や投票の管理など選挙関連業務の効率化を図るためのシステム

参照:
住民記録システム標準仕様書 総務省
国民年金システム標準仕様書 厚生労働省
選挙人名簿管理システム標準仕様書 総務省

税関連業務

  • 固定資産税システム
    固定資産税の賦課・徴収を行うため固定資産の評価や課税台帳等を管理するシステム
  • 個人住民税システム
    個人住民税の賦課・徴収を行うため課税対象者の所得等を管理するシステム
  • 法人住民税システム
    法人住民税の賦課・徴収を行うため法人の申告情報等を管理するシステム
  • 軽自動車税システム
    軽自動車税の賦課・徴収を行うため軽自動車の登録情報等を管理するシステム

参照:
税務システム標準仕様書 総務省

国民健康保険関連業務

国民健康保険関連業務として、被保険者の資格等を管理する国民健康保険システムが対象になっています。

  • 国民健康保険システム
    被保険者の資格等の管理を行うシステム

参照:
国民健康保険システム標準仕様書 厚生労働省

障害者福祉関連業務

  • 障害者福祉システム
    障害者手帳や各種手当に関する情報等の管理を行うシステム

参照:
障害者福祉システム標準仕様書 厚生労働省

介護福祉関連業務

  • 後期高齢者医療システム
    後期高齢者医療制度に関する資格情報等を管理するシステム
  • 介護保険システム
    後期高齢者医療制度に関する資格情報等を管理するシステム

参照:
後期高齢支援システム標準仕様書 厚生労働省
介護保険システム標準仕様書 厚生労働省

児童・子育て支援関連業務

  • 児童手当システム
    児童手当制度に基づく受給資格者や支給対象児童の情報等を管理するシステム
  • 児童扶養手当システム
    児童扶養手当の支給事務に関する業務を管理するシステム
  • 子供・子育て支援システム
    子どものための教育・保育給付や子育てのための施設等利用給付などに関する業務を管理するシステム

参照:
児童手当システム標準仕様書 こども家庭庁
児童扶養手当システム標準仕様書 厚生労働省
子ども・子育て支援システム標準仕様書 こども家庭庁

戸籍関連業務

  • 戸籍システム
    戸籍の編成、管理等を行うシステム
  • 戸籍附票システム
    住民基本台帳制度上の戸籍の附票事務を管理するシステム

参照:
戸籍情報システム標準仕様書 法務省
戸籍附票システム標準仕様書 総務省

その他業務

  • 生活保護システム
    生活保護制度に基づく申請・決定、ケースワーク等業務を管理するシステム
  • 健康管理システム
    地方自治体が行う健康教育や健康相談などの健康増進事業等を管理するシステム
  • 就学システム
    地方自治体が行う学齢簿編成や就学補助業務を管理するシステム
  • 印鑑登録システム
    印鑑登録証明業務等を管理するシステム

参照:
生活保護システム標準仕様書 厚生労働省
健康管理システム標準仕様書 厚生労働省
就学事務システム(学齢簿編製等)標準仕様書 文部科学省
就学事務システム(就学援助)標準仕様書 文部科学省
印鑑登録システム標準仕様書 総務省

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基幹業務システムの移行は2025年度末まで

住民サービスの向上等を早期に実現するために、基本方針の中で自治体は基幹業務システムを2025年度(令和7年度末)までに移行することとしています。

しかし、一律に2025年度が移行の期限というわけではありません。

当初は2025年度への完全移行を目指していましたが、移行期間中にベンダへ業務が集中し、対応してもらえない自治体が発生するといった問題が浮き彫りになってきました。

そのため基本方針を見直し、現在は難易度が極めて高いシステムは個別に期限を設定できるよう緩和されています。

ただ原則として2025年度までという期限は変わっていないため、その間の自治体とベンダの対応は慌ただしくなるでしょう。

参照:
地方公共団体情報システム標準化基本方針 デジタル庁
地方公共団体情報システム標準化基本方針の変更の概要 デジタル庁

標準化システム導入のメリット

標準化されたシステムを導入することで以下のメリットが得られます。

 コスト削減
 業務効率の向上
 住民サービスの向上

ここからは上記3点のメリットについて解説していきます。

コスト削減

基本方針では自治体システムの標準化によって「標準化対象事務に関する情報システムの運用経費等の3割削減の実現につなげる」と掲げています。

基幹業務システムは関連する法律等に基づいて運営されていますが、法律改正などで制度に変更が生じた場合、都度システムも改正しなくてはいけません。

そんなとき従来のシステムでは各自治体が個別のシステムを所有していることから、システム改修に多額のコストがかかってしまいます。

しかし標準化を進めた場合、システムの根幹となっているクラウドを改修するだけで全国の自治体に反映できるため、低コストで対応が可能です。

以上のことから、自治体システムの標準化はランニングコストの削減につながるものと期待できます。

参照:
地方公共団体情報システム標準化基本方針 デジタル庁

業務効率の向上

自治体システム標準化により、システム改修などがスムーズになり業務効率の向上に繋がります。

標準化以前だと改修の都度、独自のシステムに対してどのように対処すべきか自治体とベンダが協議を行う必要があり労力を要しました。

しかしシステムを標準化することでベンダとの情報共有や連携がスムーズになることから、基幹業務システムに関する業務の効率化が期待できます。

参照:
自治体システム標準化を実現するには?背景や目的もあわせて解説 BizDrive(NTT東日本)

住民サービスの向上

自治体システムの標準化は住民サービスの向上にも寄与します。

既述の通り標準化を行う前のシステム改修は、労力を要するものでした。

しかしシステムの標準化による業務効率の向上によって、職員のリソースが確保できるようになります。

そしてシステムそのものの利便性向上も期待できるため、自治体システムの標準化は住民サービスの向上にも有効だと言えるでしょう。

参照:
地方公共団体情報システム標準化基本方針 デジタル庁
自治体情報システムの標準化・共通化 総務省

標準化のデメリット

自治体システムの標準化は以下のデメリットをもたらす可能性があります。

 初期導入コストの発生
 思わぬランニングコストの増加

ここからは、これらのデメリットについて解説していきます。

初期導入コストの発生

既存のシステムに変わって、標準仕様書に沿ったシステムを新たに導入しなければならないため、初期導入コストが発生することが標準化のデメリットの一つです。

しかも導入時期が重なるため、ベンダの人材確保が難しくなること等から、コストの高止まりが懸念されます。

そして現時点において導入に向けた国の補助金も不透明であることから、予想を大きく上回る初期導入コストの発生も考えられます。

参照:
1割が白旗、「自治体システム大移動」で広がる混乱 171団体が「2025年度までの移行は困難」と表明 東洋経済オンライン
自治体システム標準化、ガバクラ移行で運用コスト2~4倍に悲鳴「議会に通らない」 日経クロステック
第213回 参議院 決算委員会 第4号 国会会議録検索システム

思わぬランニングコストの増加

基本方針では標準化システムによって既存システムのランニングコストを3割削減することを目標としていましたが、ランニングコストが増加する恐れがあります。

円安や人件費の高騰などにより、日本国内では様々な物価が上昇しており、このシステム導入も例外ではありません。

また先行してシステムの標準化を実施した自治体のうち半数以上がランニングコストが増加したという結果も得られています。

そのため3割削減が達成されないばかりか、自治体システムの標準化は思わぬランニングコストの増加を招くかもしれません。

参照:
第213回 参議院 決算委員会 第4号 国会会議録検索システム
システム移動で自治体悩ます「2つのコスト問題」 運用経費「3割減」うたう政府目標に疑問の声も 東洋経済オンライン

まとめ

国が進める自治体システム標準化は、住民サービスの向上や業務効率化を目指し、2025年度末までに地方自治体の基幹業務システムを統一する施策です。

これにより、コスト削減や住民への均一なデジタルサービス提供が期待されますが、各自治体の移行スケジュールやベンダ対応が課題となっています。

そのため、標準化に携わるエンジニアのニーズが高まっています。

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