本記事では、GX(グリーントランスフォーメーション)の海外における事例と日本の現状について解説します。
日本でも2023年にGX関連二法が成立するなど、GXに向けた動きは進んでいますが、世界各国の進捗にまで目を向けている方は多くないのではないでしょうか。
本記事を最後まで読むことで、世界における日本の進捗を知ることができます。
GXやグローバルな視点で日本の現状を理解したい方に、ぜひ読んでいただきたいです。
また、GXの概要や日本企業の事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
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目次
世界のGX普及について
まずは世界各国においてGXがどのくらい普及しているのか、現在の各国の目標や取り組みから解説します。
日本と各国の目標を比較すると、日本の現状が俯瞰的に見えてきます。
世界各国のGXに向けた目標
現在2050年など期限を設けて、カーボンニュートラルの実現を掲げている国や地域は、資源エネルギー庁によると150以上存在します。
その中でも今回は、アメリカや中国など先進国と日本を中心に紹介します。
各国のカーボンニュートラル達成についての目標年とその過程は次の通りです。
国名 | 日本 | アメリカ | 中国 | EU | イギリス |
カーボンニュートラル
達成目標 |
2050年 | 2050年 | 2060年 | 2050年 | 2050年 |
達成までの過程 | 2030年に、2013年度比で46%減 | 2030年に2005年比で50~52%減 | 2030年までにCO2排出量を減少に転換 | 2030年に1990年比で55%減 | 2030年に1990年比で68%減 |
このように比較すると、各国のカーボンニュートラル達成年や、2030年に目指す地点がそれぞれ異なっています。
また、日本の2030年における削減目標は、各国の2013年度排出量ベースで考えると、欧米などと近い水準を目指しています。
引用元
・「令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)一覧」経済産業庁資源エネルギー庁
・「カーボンニュートラルと国際的な政策の動向及び企業への影響」三菱総合研究所
・「欧州グリーンディール」駐日欧州連合代表部
世界の二酸化炭素排出量ランキング
次に世界の二酸化炭素排出量に占める各国の割合を解説します。
全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2020年世界の二酸化炭素排出量は約314億トンでした。
このうち中国が32.1%を占めており、最も排出量が多いです。
次にアメリカが13.6%で、インド(6.6%)、ロシア(4.9%)と続いて日本は3.2%と5番目に排出量の多い国です。
中国は二酸化炭素排出量抑制について2020年に、2030年までにカーボンピークアウト、2060年までにカーボンニュートラル達成を掲げています。
次に排出量の多いアメリカは、一度パリ協定からの離脱を通告しましたが、2022年バイデン政権下において、パリ協定の目標達成に向けて取り組むことを表明しました。
このように各国のスタート地点は異なりますが、それぞれGXに向けた取り組みを進めています。
引用元
・「米国史上最大の気候変動対策法が成立」アメリカ大使館公式マガジン アメリカン・ビュー
・「トランプ政権、パリ協定からの離脱を正式通告」JETRO
海外企業のGX事例
ここからは、海外の企業におけるGXへの取り組み事例を紹介します。
本記事では次の企業が具体的にどのようなGXに向けた取り組みを進めているか紹介します。
- Apple
- Amazon
- マクドナルド
- フィリップス
- ナブテスコ
それぞれ順番に見ていきましょう。
Apple
アメリカの大手IT企業Appleでは、事業を100%再生可能電力で行っており、2020年からカーボンニュートラルを達成し続けています。
次の目標として、Appleのサプライチェーンに対して2030年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。
すでに2015年から再生可能電力への移行や低炭素の事業設計などを通して、サプライチェーンの温室効果ガス排出量の40%削減に成功しました。
さらにサプライチェーンに対して再生可能エネルギーの使用やその比率の向上を求め、事業全体でクリーンな活動を推進しています。
引用元
・「脱炭素化を要請」Apple Newsroom
・「カーボンニュートラル達成を約束」Apple Newsroom
Amazon
アメリカの大手IT企業Amazonでは、2040年までのカーボンニュートラル達成を目標としています。
これに向けて2025年までに事業で使用するエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄えるよう、サプライチェーン全体で取り組んでいます。
2022年に消費したエネルギーのうち90%は、再生可能エネルギーで賄われており目標達成に着実に近づいていると言えるでしょう。
また、この取り組みの中でAmazonは世界最大の再生可能エネルギー購入企業となっており、再生可能エネルギー市場にも良い影響を与えています。
引用元:「カーボンニュートラル達成に向けた中国政府、企業の対応状況」JETRO
マクドナルド
日本にも多数の店舗を持つマクドナルドは、2030までに世界全体の店舗・オフィスからの二酸化炭素排出量を2015年比で36%削減すると発表しました。
取り組みの一環として、アメリカのフロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールド内の店舗を100%再生可能エネルギーで運営できるように設計しています。
この店舗では、厨房機器に省エネタイプのものを採用し、最もエネルギー消費量の多い調理に必要なエネルギーを削減。
さらに、フロリダの暖かい気候を活かした換気方法を導入し、エアコンの使用量も減らしています。
これらの取り組みと約745平方メートルの大きな床面積を活用してソーラーパネルを導入し、クリーンな店舗運営を行っています。
引用元:「再生可能エネルギーで営業するマクドナルドのレストラン」未来図
フィリップス
オランダの電機メーカーであるロイヤルフィリップスは、2015年にオランダとアメリカにある工場・オフィスで使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えました。
中でもオランダ国内の工場とオフィスでは、風力発電基地で作られた電力のみで賄われています。
そして、2019年にはGoogleなどの企業と共に、電力会社から再生可能エネルギーを共同購入する長期契約を結びました。
また製造する機器の軽量化や製造工程の省エネ化を進め、2018年からの2年間で二酸化炭素排出量を10%削減しながら、売上も4.5%向上させています。
引用元:「カーボン・ニュートラルへ向け疾走する欧州企業」朝日新聞 SDGs ACTION
ナブテスコ
日本企業のナブテスコは、中国の現地法人が設置する工場において、省エネと再生可能エネルギーの利用を進めています。
工場内の空調を省エネタイプに更新し、照明もLEDへ置き換えました。
さらに、太陽光発電パネルを設置して、外灯を再生可能エネルギーのみで賄えるように仕組みから変えていきました。
加えて、電力使用状況をリアルタイムで確認できるよう可視化し、無駄な電力消費がないか確認したことで、年間数百万円のコスト削減にも成功しています。
引用元:「カーボンニュートラルに直結する電力コスト削減 ナブステコ様」KDDI
世界から見た日本のGXの現状
ここからは、日本のGXの現状について解説します。
日本のGXがどのくらい進んでいるのか、どのような施策が行われているのか、具体的に解説しますので、世界における日本の現状を知りたい方は参考にしてみてください。
日本の温暖化対策の進捗
まずは、日本の温暖化対策がどのくらい進んでいるのかを解説します。
環境省が運営する「脱炭素ポータル」によると、日本では2013年度から2020年度までで、二酸化炭素排出量を約3億トン減少させました。
前段で紹介した、2030年に二酸化炭素排出量を2013年度比で46%減少させる目標を達成するためには、2020年度から2030年度の間でさらに3.5億トン排出量を削減する必要があります。
目標値の約半分を削減できており、2030年目標の達成が期待されます。
引用元:「2020年度における地球温暖化対策計画の進捗状況」脱炭素ポータル 環境省
GX関連法の成立
2023年にGXに関連する2つの法律が成立しました。
GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)では、GX推進戦略の策定やカーボンプライシングの導入について決定されました。
GX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)では、再生可能エネルギー普及のための支援策や原子力発電所の稼働に関するルールが盛り込まれています。
引用元
・「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要」環境省
・「「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が閣議決定」経済産業省
・「GX推進法・GX脱炭素電源法が成立、再エネの競争力向上へ」日経BP
GXリーグの創設
持続可能な成長を目指す企業が集まって、企業群として官公庁や大学と共にGXを主体的に推進するための場として、経済産業省がGXリーグを創設しました。
GXを単なるエコ活動としてではなく、企業の競争力を高める好機として取り組んでもらうために、GX投資促進や排出量取引などの内容について意見交換を行う場といった位置づけです。
引用元
・「GXリーグとは」GXリーグ
・「GXリーグ基本構想」経済産業省
まとめ
今回はGXについて、海外企業の取り組み事例や世界各国の取り組みと日本の現状について解説しました。
GXは、地球温暖化問題と密接に関わるため、今後も重要なトレンドになります。
企業や政府における様々な取り組みが登場することが予想されるので、見逃さないようにしましょう。
また、GXと関係性の深いDXについても今後さらに進んでいくと見込まれます。
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