中国の北京や上海といった、大都市を含む各省区に再びコロナ感染拡大の波が押し寄せている2022年現在、人々の暮らしはデジタル化の恩恵を受けています。
日々の生活だけでなく、ビジネスの現場においてDX（デジタルトランスフォーメーション）の先進国として知られている中国で、AmazonのクラウドサービスやSAPと連携するソリューションが脚光を浴びるようになりました。
本記事では、当メディアを運営するストラテジーテックコンサルティング編集部の海外担当が、中国、香港のSAPクラウド移行の成功事例をわかりやすくご紹介します。
目次
海外DXトレンド：中国市場のSAP社ERPクラウド
中国でSAP S/4HANA Cloudの立ち上げが発表されたのは2021年のことです。
これはSAP社がリリースしたソリューションパッケージであるRISEのグローバル戦略において、重要な出来事でした。
そして同年にSAP社は、RISE with SAPを中国市場で最優先にすべき開発戦略であると位置づけました。
このようなSAP社の動向を含め、世界的にデジタルトランスフォーメーションが推進されていますが、中国においても既存システムの運用保守に関わる費用やメンテナンスが課題となっているのが現状です。
そこで運用費用が抑えられるクラウドへの移行が注目されていますが、そのプロセスは順調とは言い切れません。
SAP社のERPを導入している様々な企業にとって、クラウド移行をどのように進めていくべきかは課題のひとつとなっています。
例えば課題の一つとして、SAP社のERP製品の保守サービスが2025年で終了してしまうことを受け、経営層の理解をどのように促し、移行案件のスケジュールを管理していくかが挙げられています。
そのようなクラウド移行に対する課題には、ビジネス変革の負担を軽減するSAP社のパッケージソリューションが解決策として挙げられます。
中国市場でのSAP社の目標は、経営層を含めたクライアントの課題や要望に対して柔軟性を持ってバリューを発揮できるような、顧客の視点に立ったクラウド・エンタープライズになることであるため、SAP S/4HANA Cloudを活用した顧客への支援を推し進めていくことでしょう。
特に中国ではクラウドファーストと呼ばれる次世代ソリューションを中小企業向けにも提供することで、大企業のみならず中小企業まで取りこぼすことなく企業のイノベーションを支えていく方針です。
参考：SAP发布2021年中国三大策略 为企业智慧化转型提供五星级服务
海外DX事例1：中国系商社のSAPクラウド人事導入
SAPジャパンは、ハイケム社がSAP社のクラウド人事ソリューションSAP SuccessFactorsを導入したと発表しました。
中国系の商社であるハイケム社は、SAPに特化したコンサルティングを行うオデッセイ社のテンプレートを活用して1ヶ月という短期間でクラウド導入を実現したのです。
クラウド導入によって、タレントマネジメントの領域において、グローバルな人材育成や労務情報の可視化を目的としていました。
導入が成功したことで、コスト削減やAIによる給与計算の自動化、データドリブンな人材育成が可能となりました。
ちなみにこのSAP社のクラウド人事ソリューションSAP SuccessFactorsは、日本市場向けには労務管理までをカバーしたHCMスイート（HCM Suite）として開発されています。
オデッセイ社と手を組んだ中国系商社ハイケム社の導入事例と日本市場向けHCMスイートは、国内のクラウド人事プロジェクトを遂行する上でも参考になるかもしれません。
参考：中国系化学品商社のハイケム、SAPのクラウド人事システム 「SAP® SuccessFactors®」を1カ月で導入し、タレントマネジメントを運用開始
海外DX事例2：中国SAPゴールドパートナーの成功事例
中国の上海に本社を置くMTC社は、SAP社のゴールドパートナーとして知られています。
MTV社はSAP専門のコンサルティング事業を中心に、北京や広州を含む中国各地、アメリカやドイツだけでなく日本でもクラウドサポート事業を展開しています。
同社の成功事例として欧喜（Ouxi）食品のSAP Business Oneを導入したケースをみていきましょう。
欧喜（Ouxi）グループはSAPソリューションの活用により、生産状況やコスト管理をリアルタイムで把握できるようになりました。その結果、課題の迅速な発見をすることに繋がり、その課題に対して解決に向けた取り組みをスピーディに取り組むことに貢献しました。
同社が導入を決めた経緯としては、元々従来のシステムでは変化の激しい市場に対応しきれないという課題があり、その課題を解決できるシステムとして、SAP Business Oneソリューションが候補にあがったというものでした。
元々、既存のシステムは市場の変化に追いつけないだけでなく、システムの運用保守も煩雑になってしまったことで欧喜（Ouxi）食品の安全性を含めた追跡管理にもデータが曖昧であるといった影響が出始めていました。
このような課題に遭遇したとき、適切なソリューションを選択することはとても重要で、それは会社の経営を支える土台となるだけでなく、提供するサービスの品質の担保やそれによる顧客満足度にも影響を及ぼすことが考えられます。
そこで常に変化する市場への対応策としてSAP Business Oneが候補として挙がり、初期費用が抑えられる点も評価され、最終的に同ソリューションが導入されることが決まりました。
導入にあたっては専門的で安定したコンサルティングサービスを提供するMTC社が選ばれました。
同社の導入コンサルタントがチームと連携してクライアントの課題を迅速に抽出し、導入実装に活かしていったのです。
具体的にはクライアントの食品業界に特化したカスタマイズ機能を開発したり、仮想倉庫モジュールを開発することで、時間がかかっていた不良品の状況の把握を含めた従来の業務プロセスを透明化するといったメリットをもたらしたのです。
ここでご紹介した事例は、MTC社の優れたコンサルタントによる円滑なERP導入の成功事例であり、SAP社のゴールドパートナーならではの深い専門知識と経験が活かされたケースといえるでしょう。
海外DX事例3：香港グローバル企業のAWSでのSAP連携
3つ目の事例は、AWS（アマゾン・ウェブ・サービス／Amazon Web Services）クラウドでのSAP連携について、香港でのケースをご紹介します。
伝統的な香港の国際企業スワイヤーグループのスワイヤー・コカ・コーラ社がアマゾンAWS上へSAPを移行した成功事例です。
同社は既存のデータセンターを閉鎖し、アプリケーションをすべてAWSに移行しました。
それによりコスト削減と安定したサービスを得ることができるようになりました。
その結果、セールスを担当する万単位の規模の同社のスタッフだけではなく、億単位の規模の消費者にまでクラウドサービスの提供ができるようになったことで市場の変化に強くなるといったメリットをもたらしました。
元々同社は、デジタルトランスフォーメーション戦略として、従業員だけでなく消費者を巻き込むデジタル変革が必要だと認識していました。
大規模なDXを実現するにあたり、プロジェクトは以下のようなスケジュールで進められました。
＜SAPを含めたAWSクラウド移行のプロセス＞
１，ITチームのクラウド戦略の承認をビジネスリーダーから獲得
２，クラウド移行開始
３，約1年かけて移行を完了させた後、データセンターを閉鎖
４，最終的にSAPの基幹システムもAWS上へ移行
（移行期間中は、オンラインとオフラインを両立させたハイブリッド型でシステムを稼働）
システムのサポート対象となるビジネスの分野やユーザー数が急速に増え、且つプロモーション活動中のニーズの大きな変化に対応するため、SAP基幹システムを含むAWSへのクラウド完全移行は、迅速に対応することが求められました。
そして実現したSAP基幹システムを含むAWSへの完全移行は、これまで必要とされてきたハードウェアやソフトウェアの準備期間が削減できるため、プロセスの工数削減も同時に実現することに貢献したのです。
参考：Swire Coca-Cola Case Study／AWS
中国/香港SAP海外事例まとめ
事例1では、中国系商社の人事領域をグローバル規模で支えるケースをご紹介しました。
事例1のように企業自体がグローバル展開をしている企業であったり、事業そのものが越境ビジネスであったりする場合、SAPのようなグローバル且つクラウド型のソリューションが重宝される傾向にあります。
事例2では、中国に深く根付く企業が食品という特定の業界に特化してSAPソリューションを専門的にコンサルティング支援することで成功した事例をご紹介しました。
事例3では、香港のグローバル企業によるAWSへSAPを連携させた、クラウド移行の成功事例について、そのプロセスに注目して触れました。
どの事例もプロジェクトの中心には、中国、香港各地の文化に詳しくビジネスに知見を活かせるコンサルタントやパートナーの存在がありました。
彼らの存在が成功事例を作り上げたポイントともいえるでしょう。
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