私たちの日々の暮らしになくてはならない存在となっている物流業界では、人手不足や長時間労働といったさまざまな課題に直面しています。
そういった課題を解決すべく、省人化・自動化が必要な物流業界では、IoT技術を使ったDXが進められています。
今回の記事では、そんな物流業界において、IoTを活用したDX事例をご紹介していきます。
目次
IoTとは
IoTとは「Internet of Things」の略称で、直訳すると「モノのインターネット」です。
今まで、情報通信を行う端末といえばPCや携帯電話（スマホ）がメインとなっていました。
IoTの技術を使うことで、電子レンジやテレビといった家電製品、時計や衣服など様々な「モノ」がインターネットに繋がり、様々情報のやり取りをすることができるようになります。
物流業界においては、特に人手不足解消や業務効率化、顧客への付加価値提供といった幅広い活用が期待されており、まさに今知っておくべき技術となっています。
物流業界における課題
製造業にはさまざまな課題がありますが、なかでもIoTと親和性が高く、業界内でも大きな課題として認識されているが以下の4つです。
・人手不足
・長時間労働の恒常化
・配送スピード向上への対応
・配送事故
人手不足
物流業界ではEC市場の拡大により、宅配が増加し配送ドライバーや配送センターでの人手不足が進んでいます。
EC市場の規模は2017年から2019年の3年間で毎年1兆円規模の拡大傾向にあります。
宅配便の取り扱い数も5年で約6億7000万個も増加しています。
さらに、新型コロナウイルスの影響で2020年度には宅配便の取り扱い数は前年度比の＋11.9%となっています。
業務が増える一方で人手不足を解消できていないため、物流業界ではおおきな課題となっているのです。
IoT技術を活用することで、配送ルートや積荷の最適化を行うことができるようになり、業務を効率化し、人手不足解消を期待することができます。
長時間労働
ドライバーの長時間労働も物流業界の課題となっています。
現在では、陸上貨物運送業が過労死のワースト1位となっており、長時間労働のストップが求められています。
2024年には、トラックドライバーの時間外労働に対して罰則付きの上限が設けられることになりました。
これにより、長時間労働が抑えられることが期待されています。
一方で、ドライバーの方々は今まで残業でこなしていた分の業務を時間内に抑えるために業務を効率化していくことが求められるようになります。
2024年に向けて、IoTやAIなどの技術を活用した業務改善が必要になります。
配送スピードの向上
EC市場の拡大により、宅配便の数が増加するだけでなく、配送スピードの向上も求められるようになりました。
即日配達や翌日配達といったスピード感が当たり前となっており、同業他社との差別化にもなります。
人手不足が進む中で配送スピードの向上を目指していくためには、倉庫システムの効率化や配送ルートの効率化が必要です。
IoT技術を活用することで、そういった課題への対応も可能となっていきます。
物流における事故
物流業務が増えるなかで、物流の中で起こる事故も大きな課題となっています。
長時間労働からくる眠気が原因で、交通事故を起こしてしまうなんてことも多くあるといいます。
また、交通事故にはならなくても、無理な運転により荷物が破損してしまうこともあります。
IoT技術を活用することで、業務を効率化し、ドライバーが常に万全な状態で運転することができるようになり、交通事故の削減も期待することがでいるようになります。
荷物の揺れなど、IoTデバイスを用いて取得することによって、万が一輸送中に荷物が破損した場合、データをもとに原因の追求や改善策の検討が可能になります。
IoT活用のメリット
ここまで、物流業界における課題について解説してきました。
IoTを活用することにより、どのようなメリットや効果が見込めるでしょうか。
ここでは 、IoT活用のメリットとして期待できることを3つご紹介します。
後半では具体的な事例もご紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
配送業務の効率化
IoTを活用することによって配送業務の効率化が期待できます。
貨物車の積載情報や空車情報などのデータ収集をリアルタイムで行うことができるようになります 。
積載量をリアルタイムに把握し、共有することができれば、より最適な配車が可能になります。
配車の効率化ができれば、配送コストや人件費の削減につながるとともに、ドライバーの健康維持にも効果があります。
設備メンテナンスの効率化
IoTの活用によって、設備メンテナンスの効率化も期待することができます。
物流業務を支えるさまざまな設備の状態をIoTデバイスによってデータ収集することで、設備の異変をいち早く発見することができるようになります。
従来の設備メンテナンスでは、設備にトラブルが発生してから対応する事後保全が主流であり、突発的な対応が必要となっていました。
IoTを活用することで、些細な異変にも気がつく事ができ、日常的にメンテナンスがしづらいような場所に関しても監視することが可能になります。
データ収集によるトラッキング
IoTを活用することで、倉庫内の在庫数や商品の配送状況をリアルタイムでトラッキングすることができるようになります。
また、トラッキングしたデータは履歴として残すことができるため、万が一トラブルが発生した際にも原因の追求がやりやすくなります。
IoT化が進むと、配送中の温度変化や振動情報なども確認することができるようになり、トラブルを未然に防ぐことができるようになります。
物流業界のIoT活用事例3選
物流業界の課題やIoT活用のメリットについて解説してきました。
IoT活用イメージをさらに具体的なものにするため、実際に導入されて、効果があった事例を3つご紹介します。
ぜひ、IoTを活用したDX実現のため、参考にしてみてください。
倉庫経路案内による出荷効率の改善
ある物流会社では、倉庫内の経路案内ソリューションを導入することで、出荷効率を30%改善したという事例があります。
導入前は、ピッキング時の移動経路が担当者の裁量によって決められていました。
そのため、新人とベテランの間には生産性の大きな差が生まれていました。
人手不足が進み、新人でもベテラン並の生産性が求められる必要があります。
そこで、IoTを活用したピッキング経路案内ソリューションを導入し、作業の効率化を行いました。
同ソリューションでは、在庫商品と担当者の位置をIoTで把握し、ピッキングまでの最短経路を計算します。
これにより、新人とベテランの生産性の差を埋めることができるようになり、全体的な生産性を底上げすることに成功しました。
医薬品輸送の温度管理
温度管理に厳格な医薬品の輸送を高いレベルで行うため、IoTを活用した温度管理を導入した会社があります。
医薬品の輸送中、温度や位置情報といったデータをリアルタイムで収集し、異常事態を早期に発見・対応できる体制を整えました。
その結果、本来温度管理機能がついていない車両でも輸送できるようになり、配送効率が上がりました。
また、品質に敏感なお客様の信頼を得ることにも繋がっています。
IoTを活用することで得られるデータには、医薬品以外にも壊れやすいものや温度管理が必要な食材など、さまざまな分野で応用が可能です。
在庫のリアルタイム管理
物流では、在庫の管理も重要な業務となります。
IoTを活用することにより、どこに何がどれくらいあるのか、という情報をリアルタイムで一元管理することが可能になります。
そのため、とくに時間のかかる棚卸し業務やピッキング業務において大幅な作業効率化を実現することができます。
まとめ
今回の記事では、物流業界における課題やそれらを解決するためのIoT活用方法について、事例を交えて解説してきました。
人手不足やドライバーの長時間労働、配送スピードの向上といったさまざまな課題を抱えている物流業界ですが、IoTを上手に活用することで業務効率化が可能です。
今後、EC市場はさらに拡大し、物流業界に求められる業務は増加していくことが予想されます。
また、2024年に時間外労働に対する罰則付きの上限が設けられることによって、今まで以上に業務を効率化していくことが求められるでしょう。
IoTの導入・活用はかんたんではありませんが、これからの業務になくてはならない存在になるため、導入検討を進めていくことが必要です。
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