本記事では医療DX推進体制整備加算の内容や施設基準を、疑義解釈などの資料を基に解説します。
内容を紐解くことで見えてくる医療DXの課題や、目指す方向性にも触れますので、DXに興味のある方も参考にしてみてください。
2年に1回の診療報酬改定が行われ、2024年6月より医療DX推進体制整備加算が新設されました。
具体的にどのような取り組みに加算が行われるのか詳しく見ていきましょう。

目次
医療DX推進体制整備加算とは

医療DX推進体制整備加算とは、2024年の診療報酬改定で新設された制度です。
オンライン資格確認によって取得した診療情報などを活用できる体制が整っていたり、電子カルテ情報共有サービスを導入していたりするなどの要件を満たしている場合に、医科であれば8点から11点が診療報酬に加算可能になります。
オンライン資格確認の導入が令和5年4月に原則義務化され、導入率が令和6年5月時点で90.7%に到達したことを受け、さらなる医療DX推進のために導入されました。
参照元
・「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算」FPサービス株式会社
・「医療DX推進体制整備加算、2024年10月から3区分に変更」日経メディカル
・「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」厚生労働省
・「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」厚生労働省
医療DXとは
医療DXとは、医療業界の業務効率化や質の高いサービスを提供するためにデジタル技術を取り入れることです。
厚生労働省のホームページでは、次の5つの実現を目指しています。
❶ 国民の更なる健康増進
❷ 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
❸ 医療機関等の業務効率化
❹ システム人材等の有効活用
❺ 医療情報の二次利用の環境整備
これらの実現のために「医療DX令和ビジョン2030」を策定し、重点的に行う取り組みとして、「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)、診療報酬改定DXを掲げています。
参照元
・「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム」厚生労働省
・「医療DXについて」厚生労働省
・「【2030年に電子カルテ普及率100%?】「医療DX令和ビジョン2030」を読みとく」ケアネットワークスデザイン
・「5分でわかる「医療DX令和ビジョン2030」」Medicom
新設された背景
医療DX推進体制整備加算が新設されるまでは、医療情報・システム基盤整備体制充実加算が適用されていました。
医療情報・システム基盤整備体制充実加算は、オンライン資格確認を行う体制を有していることが主な要件となっているため、医療DX推進体制整備加算の前身といえます。
先ほど紹介したように、オンライン資格確認の導入率が90%に到達したことで、導入から活用へステージを移したものです。
医療情報・システム基盤整備体制充実加算は、医科において配点の見直しにより減点となった上で、医療情報取得加算に名称変更して令和6年以降も継続されています。
参照元
・「医療DXについて」厚生労働省
・「医療DX推進体制整備加算の算定要件について」厚生労働省
医療DX推進体制整備加算の施設基準

医科が医療DX推進体制整備加算を受けるためには、次の施設基準を満たす必要があります。
1)オンライン請求を行っていること
2)オンライン資格確認を行う体制を有していること
3)電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること
4)電子処方箋を発行する体制または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること
5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
6)マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること
7)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること
8)マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること
本章ではこのうち、経過措置があるものや疑義解釈で補足されているものについて解説します。
診療情報を閲覧又は活用できる体制を有していること
先ほど紹介した施設基準の3つ目ですが、厚生労働省の疑義解釈によると、単にオンライン資格確認システムなどで診療情報を取得しているだけでは施設基準を満たしているとは言えないとされています。
従来の医療情報・システム基盤整備体制充実加算および現行の医療情報取得加算を満たしているに過ぎないためです。
オンライン資格確認などのシステムを用いて取得した診療情報を、医師が閲覧または活用できる体制を有している場合に該当しているとみなされます。
電子処方箋を発行する体制を有していること
医科・歯科においては電子処方箋を発行する体制を有していること、薬局においては電子処方箋を受け付ける体制を有していることが要件となっています。
こちらは経過措置が設けられており、令和7年3月31日までの間は体制を有していなくても該当するものとして扱ってよいとされています。
電子処方箋の導入については、デジタル庁によると2025年5月時点の導入率は31.5%であり、そのうち約8割が薬局です。
具体的に、各施設数に対する導入割合で見ると、薬局が79.7%、病院12.3%、医科診療所18.3%、歯科診療所4.2%となっています。
病院や診療所での導入はまだまだ不十分だと言えます。
参照元
・「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」デジタル庁
・「疑義解釈資料の送付について(その2)」厚生労働省
電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
電子カルテ情報共有サービスとは、電子カルテの情報を全国の医療機関および薬局で共有する仕組みです。
これによって、紹介状が電子化されたり、他の医療機関における診療情報がスムーズに共有されたりすることが期待されています。
この電子カルテ情報共有サービスを導入することが要件になっていますが、令和7年9月30日までは導入できていなくても該当するものとして扱う経過措置が設けられています。
電子カルテ情報共有サービスの普及状況は、令和2年に行われた厚生労働省の調査によると、400床以上の大病院においては91.2%です。
しかし、小規模病院や一般診療所では約半数に留まっており、全体では57.2%となっています。
参照元
・「医療分野の情報化の推進について」厚生労働省
・「疑義解釈資料の送付について(その2)」厚生労働省
マイナンバーカード健康保険証利用率について
マイナンバーカード健康保険証の利用率が、一定割合に達していることを要件とする施設基準です。
令和7年4月に制度が見直されました。
そこでの見直しでは、マイナンバーカード健康保険証の実績要件が引き上げられ、加算の点数は電子処方箋の導入を踏まえて6種類に整理されました。
利用率が高いほど加算点数が増え、医科においては8点から最大11点の加算が可能です。
例として、令和7年4月~9月における医科の加算点数を利用率とともに表にまとめました。
電子処方箋要件 | 加算区分 | 医科(点) | マイナ保険証利用率 |
必要 | 1 | 加算12点 | 45% |
必要 | 2 | 加算11点 | 30% |
必要 | 3 | 加算10点 | 15% |
– | 4 | 加算10点 | 45% |
– | 5 | 加算9点 | 30% |
– | 6 | 加算8点 | 15% |
利用率の計算については、レセプト件数をベースとするのが基本です。
参照元:「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」厚生労働省
医療DX推進の体制に関する事項等についての掲示
医療DX推進体制について院内掲示を行うことで満たされる施設基準です。
こちらは医療機関において作成しても良いですが、厚生労働省が施設基準を満たすポスターを公開しており、そのまま用いてよいので、以下のリンクから確認してみてください。
医療DXを進める上での課題

ここからは医療DXを進めるうえでの課題を紹介します。
診療報酬に加算点数を設けるなど国を挙げて推進されている医療DXですが、まだまだ課題もあります。
● マイナンバーカードの普及率
● 機器の整備
それぞれ順番に見ていきましょう。
サイバー攻撃のリスク
DXを推進することで患者の個人情報などがインターネット上において、他の医療機関と共有されるため、サイバー攻撃による情報漏えいなどのリスクが高まります。
また、サイバー攻撃によるシステムトラブルが発生した際に、医療の提供が難しくなる可能性も指摘されています。
サイバー犯罪の件数は警察庁の調査によると、5年連続で増加している状況です。
そのため、医療機関においては、医療法施行規則第14条第2項でサイバーセキュリティに必要な措置を講じることが義務付けられており、安心して医療を受けられる体制が求められています。
サイバーセキュリティについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
どのようなセキュリティ対策があるか知りたい方は併せてご覧ください。
参照元
・「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」警察庁
・「医療法施行規則」e-GOV法令検索
マイナンバーカードの普及率・利用率の低さ
マイナンバーカードの普及率やマイナ保険証の利用率が低いことも課題として挙げられます。
マイナンバーカードの保有率は総務省の調査によると、2025(令和7)年4月時点で約78.0%に留まり、現状約4分の1の方がカードを持っていない状況です。
また、マイナ保険証の利用率は、厚生労働省の調査によると2025(令和7)年2月時点で26.62%となっています。
2024年と比べると利用率は向上したものの、それでもまだ、十分な認知・利用が少ない印象です。
加算要件にも設定されているマイナ保険証は、患者側にもまだまだ利用されていないのが現状と言えます。
参照元
・「マイナ保険証の利用促進等について」厚生労働省
・「マイナンバーカード交付状況について」総務省
機器の整備
医療DXの推進には、前章で紹介したように電子カルテやオンライン資格確認システムなどのハードウェア・ソフトウェアの整備が必要です。
これには大きなコストがかかり、導入のハードルとなっています。
独立行政法人情報処理推進機構の「DX動向2024」を見ると、医療業界が含まれる「サービス業種」におけるDXの取り組み状況は、他業界と比較して最も低いです。
このように業界としてDXへの着手が遅れていることも課題の一つに挙げられます。
まとめ

今回は2024年の診療報酬改定で新設された医療DX推進体制整備加算について解説しました。
医療分野におけるDXは患者の利便性や医師不足が叫ばれる医療業界の業務改善に大きく寄与することが見込まれます。
国を挙げて推進する一方で、まだまだ課題も山積しています。
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