本記事では、介護・福祉業界におけるAI活用事例7選と現場が抱えている課題、AI活用によるメリットを解説します。
介護・福祉業界は、現場で人と関わる仕事が中心であることからDX化が進みにくい一方で、深刻な人手不足や職員の業務負担が大きいなどの問題が顕在化しており、業務効率化の必要性が高まっています。
AIを使ってどのように課題を解決しているのか順番に見ていきましょう。

目次
介護・福祉業界のAI活用事例

まずは介護・福祉業界のAI活用事例を7つ紹介します。
AIがどのように活用されているのか参考にしてみてください。
● シーディーアイ(SOIN)
● エイ アイ ビューライフ(A.I.Viewlife)
● パナソニックカーエレクトロニクス(DRIVEBOSS)
● 富士ソフト(PALRO)
● DFree(排泄予測機器DFree)
● KDDI(MICSUS)
TOPPAN(LASHIC+)
TOPPANは、温度や人感などのセンサーを搭載し、センサーから取得した情報を解析できるAIシステム「LASHIC+(ラシクプラス)」を開発しました。
同社は後期高齢者の一人暮らしが多い福島県昭和村において、LASHIC+を使った実証実験を行っています。
昭和村では、単身で暮らす高齢者へ役場の担当職員が定期訪問を行っています。
しかし、職員2名で約100名の高齢者世帯を見回っており、高齢化の進行による対象者増加と、人口減少などによる担い手不足が見込まれることから、業務負荷の軽減が急務となっていました。
LASHIC+では、温度や湿度、照度、人感、ドアの開閉などを検知するセンサーによって行動を把握するため、カメラなどで常時映像を取得する必要がなく、プライバシーへの配慮が可能です。
異常事態を検知したらアラートを発報し、職員に知らせます。
また、センサーから取得した情報をAIが行動習慣の学習に使用することで、使い続ける中で異常事態を検知しやすくなります。
このように単身で暮らす高齢者の行動を常時確認し続けなくてよくなるため、職員の業務負担軽減が可能です。
参照:
・「福島県昭和村と凸版印刷、IoTを活用し独居高齢者の見守り業務を支援」TOPPANホールディングス株式会社
・「凸版印刷とインフィック、センシング×AIで介護業務を支援」TOPPANホールディングス株式会社
シーディーアイ(SOIN)
シーディーアイは、質の高いケアプランを効率良く作成できる「SOIN(そわん)」を開発しました。
SOINでは、AIがこれまでに学習したデータの中から利用者と状態が近い人を探し出し、その人物の要介護度や心身の状態が維持または改善されたケアプランを提案してくれます。
また、SOINはクラウド上で使用するため、リモートワークでケアプランの作成ができ、現場仕事がメインの介護業界の働き方改革の推進にもつながります。
さらに、AIが約1年後の利用者の要介護度や将来状態を予測することもできるため、利用者自身が将来リスクを把握した上でケアプランを検討可能です。
参照:
・「 AIを用いたケアマネジメント支援サービス」SOIN
エイ アイ ビューライフ(A.I.Viewlife)
介護見守りロボットのA.I.Viewlifeは、カメラセンサーと生体センサー、ナースコール機能、インカム機能、防犯カメラが1つに集約されたAIツールです。
利用者の入退室やトイレでのうずくまり・転倒などの異常をセンサーが検知して、アラートの発報と映像共有を行います。
これによって複数の居室で同時にアラートが発報されても居室内の様子がわかるため、対応の優先度を付けて対応でき、利用者の安全を確保しやすくなります。
実際に導入した施設にでは、事故件数の減少やスタッフの訪室回数の減少につながりました。
参照:
・「製品紹介 」A. I. Viewlife
・「見守りシステムセンサー」株式会社日立システムズ
パナソニックカーエレクトロニクス(DRIVEBOSS)
パナソニックカーエレクトロニクスでは、配車計画を自動作成するAIツール「DRIVEBOSS」を開発しました。
DRIVEBOSSは、利用者の住所や迎えに行く時間帯、車いすの利用有無などの基本情報と、送迎に使用する車両情報などを入力するだけで、配車計画の自動作成が可能です。
実際にDRIVEBOSSを導入したデイサービス施設では、これまで6枚のホワイトボードと利用者の名前が書かれたマグネットを使用して配車計画を組んでいました。
送迎の計画を立てるのに1時間以上かかっていた上に、マグネットが剥がれると計画がわからなくなってしまう非効率な状態でした。
DRIVEBOSS導入後は、配車計画の作成にかかる時間が短縮され、15分程度で完了する日もあったようです。
空いた時間は利用者とのコミュニケーションや、手を付けられていなかった業務にも着手できるようになりました。
また、DRIVEBOSSが提案する配車ルートを見て新たな発見も得られています。
参照:
・「送迎システム・自動配車・テレマティクスのドライブボス」
・「社会福祉法人偕生会 那覇偕生園 様 │ ICT化によって利用者に寄り添う時間が増加!」送迎システム・自動配車・テレマティクスのドライブボス
富士ソフト(PALRO)
富士ソフトは、AIコミュニケーションロボットの「PALRO」を開発しました。
PALROは人間の顔を認識・記憶できるため、顔を見ながら会話したり、顔を覚えた人間の名前を呼んだりすることが可能です。
また、会話の中で人間の行動や趣向などを記憶し、情報を蓄積するため、会話をするほどに相手への理解を深めていきます。高齢者施設においては、利用者との会話やレクリエーションの時間に運動やゲーム、クイズ、歌唱といった催しを単体で行えるため、利用者の緊張をほぐすことや、体を動かす機会づくりに役立ちます。
人前に出てレクリエーションを行うのが苦手なスタッフの精神的負担の軽減や、準備にかかる時間を短縮することが可能です。
参照:
・「会話ロボット最先端! PALRO(パルロ)【公式】 富士ソフト」
・「FUJISOFT AI SOLUTIONS|富士ソフト AIソリューション」
DFree(排泄予測機器DFree)
排泄予測機器DFree(ディフリー)は、利用者の体に取り付けると超音波センサーで尿のたまり具合の把握と、AIの排尿パターン学習・分析によって、排尿タイミングの予測が可能な機器です。
トイレへの誘導やおむつの交換タイミングをDFreeから職員への通知で知らせるため、適切なタイミングで行えるようになります。
具体的には尿のたまり具合を10段階の数字で表示し、尿がたまってきたら「そろそろ」と通知します。
そのタイミングでトイレへの誘導が難しい場合は、次に「でたかも」通知が発報されるため、おむつやパッドの交換目安として確認が可能です。
適切なタイミングでトイレ誘導ができるようになることで、排尿ケアの業務負担やおむつ・パッド費の削減につながります。また、夜間徘徊を検知する機能もあるため、夜勤スタッフの対応不可も軽減可能です。
参照:
・「トイレ介護の失敗を減らす排泄予測機器」DFree
KDDI(MICSUS)
KDDIは、対話型AIを搭載したロボット型の端末とスマートフォンを利用することでケアマネージャーの業務負担を軽減するシステム「MICSUS(ミクサス)」を開発しました。
MICSUSは、介護の専門家の知見を学習させており、会話の中から利用者の健康状態や生活状況の変化などの情報収集と記録を行います。
画像解析機能も搭載しているため、利用者の表情やうなずきなどの非言語情報、声のトーンなどを解析し、感情の表出が認められてから0.1秒以内に感情を推定できます。
また、会話を弾ませるためWeb情報やニュース記事を基にした雑談も可能です。
同社は高齢者向け住宅で暮らす利用者の居室にMICSUSを搭載したロボットを設置し、実証実験を行いました。
決まった時間に利用者に話しかけたり、利用者からの話しかけに応じたりすることで情報収集し、対話記録の要約を専用サイトでケアマネージャーと家族が共有しました。
これによって、面談業務の負荷軽減や離れた場所で暮らす家族とのコミュニケーション活性化につながっています。
参照:
・「高齢者向け対話AIでケアマネジャー面談業務時間の7割削減に成功」KDDI株式会社
・「介護人材不足解消に向け、対話AI搭載型ロボットによる介護実証を実施」KDDI株式会社
介護・福祉業界における職場の課題

ここからは、介護・福祉業界の現場が抱える主な課題を2つ紹介します。
AI導入の背景にどのような課題があるのか参考にしてみてください。
● 業務負担の大きさ
それぞれ順番に見ていきましょう。
職員の人手不足
公益財団法人介護労働安定センターの調査では、64.7%の事業所において従業員の人手が不足していると回答がありました。
また、同調査では介護業界の離職率は減少傾向にあるとされていますが、厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、「医療、福祉」業種における離職率は14.6%と全産業の中で5番目に高い数値となっています。
人材が定着しにくい環境も、人手不足を招いている要因の一つになっています。
参照:
・「介護業界の抱える課題・問題とは?施設課題の解決策についても解説」KDDI まとめてオフィス株式会社
・「令和5年度”介護労働実態調査”結果の概要について」公益財団法人 介護労働安定センター
・「-令和5年雇用動向調査結果の概況- 」厚生労働省
業務負担の大きさ
介護・福祉業界は前述の人手不足も重なって過酷な労働環境となっています。
仕事内容は食事や入浴、排泄、衣服の着脱、夜間の見守りといった日常生活を安全に送るためのサポートに加えて、面談記録の作成や配車計画の策定などの事務作業も多いことから業務負担が大きくなっています。
参照:
・「介護業界の抱える課題・問題とは?施設課題の解決策についても解説」KDDI まとめてオフィス株式会社
・「介護業界が抱える課題とは?原因と対策を徹底解説」トーテックアメニティ株式会社
介護・福祉業界におけるAI活用のメリット

最後に、介護・福祉業界におけるAI活用の主なメリットを2つ紹介します。
● 事務負担の軽減
それぞれ順番に見ていきましょう。
現場での負担軽減
AIを搭載したカメラやセンサーを内蔵した機器によって、24時間利用者の行動を見守ることができるため、職員が絶えず見回りを行わなくてもよくなります。これによって夜間勤務のスタッフの業務軽減につながります。
また、高齢者とのコミュニケーションをAIを搭載したロボットが一部代替してくれたり、排泄予測を行ったりすることで、日常のケアを行う時間の短縮が可能です。業務負担の軽減によって、人手不足の是正やスタッフの定着率向上につながることが期待されます。
参照:
・「介護ロボットの導入メリットとデメリットとは? 介護者・被介護者それぞれの視点からご紹介」TOPPAN BiZ
・「介護現場でのAI活用のメリット・デメリットと実用例 – 介護コラム 」【公式】老人ホーム・介護施設の検索総合情報サイト 介護の三ツ星コンシェルジュ
事務負担の軽減
従来人間が一から手入力で作成していた書類や配車計画をAIが自動で作成してくれるため、その内容を基に手直しを加える程度で作業が完了し、事務負担の軽減が可能です。また、面談記録の作成も利用者がロボットに話しかけ、AIがその内容を録音から要約まで行ってくれるため、職員が直接面談を行うよりも短い時間で書類作成が完了します。
参照:
・「介護ロボットの導入メリットとデメリットとは? 介護者・被介護者それぞれの視点からご紹介」TOPPAN BiZ
・「介護現場でのAI活用のメリット・デメリットと実用例 – 介護コラム 」【公式】老人ホーム・介護施設の検索総合情報サイト 介護の三ツ星コンシェルジュ
まとめ
今回は介護・福祉業界におけるAI活用事例とそのメリットを解説しました。
AIは各業界で積極的に導入が進められており、人手不足や離職率の高さに悩んでいる介護・福祉業界においても大いに役立てられています。
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