DXによってSDG’sを達成するための着眼点|ターゲットをより深く知ろう

これからの企業活動においてホットなテーマの一つに、SDGsがあげられます。
国・企業・個人を問わず「誰一人取り残さない」ことを原則に、持続可能でより良い世界を目指す国際目標であることから、日本企業もまた例外なく取り組まなければならないテーマと言えます。
自社でSDGsの達成に向けて行動を起こす際にも、DXは企業の進化に貢献する試みです。

しかし、実際にDX導入をSDGsに結びつけるためには、SDGsにおけるどの目標の・どのターゲットに焦点を絞るのかが重要となります。
この記事では、SDGsを達成するための着眼点「ターゲット」について、企業のDXという観点から解説します。 

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SDGsのターゲットとは 


SDG
sは、大まかにお伝えすると、17の目標(ゴール)から構成される169のターゲットを達成する取り組みです。
目標達成のためには、まずターゲットに焦点を当てて、どのような行動を起こすべきか考える必要があります。 

17の目標を達成するための、より具体的な目標のこと 

SDGs上におけるターゲットとは、大きな17の目標を達成するための、より具体的な目標のことです。

例えば、目標1「貧困をなくそう」のターゲットは、以下のように細かく定められています。

1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

※出典元:農林水産省(SDGsの目標とターゲット)

企業がSDGsに取り組むにあたり、どのターゲットにフォーカスして取り組むのかを決めておかないと、せっかく取り組みをスタートさせても貢献が困難になるおそれがあります。
SDGsとは「持続可能な開発目標」のことなので、企業活動に無理を生じさせるような取り組みは、かえって経営に負担を強いる結果になってしまいます。

一例として、食品会社がフードバンクに在庫を寄贈するのは、企業活動の性質を考えると取り組みとして自然であり、負担も少ないものでしょう。
しかし、主に国内での企業活動に従事している企業が、開発途上国に継続的な寄付を行うことを決定したとしても、企業の体力によっては大きな負担になるかもしれません。

自社の企業活動において、無理なく持続可能な取り組みができそうなターゲットを探すことが、SDGsの実現につながります。
よって、企業がSDGsに取り組む際は、企業活動の一環として取り組めるターゲットを選定する必要があります。 

解釈次第では個人レベルでも行動できる 

企業活動にフォーカスするなら、自社の活動内容を考慮してSDGsに取り組むのが基本戦略です。
しかし、SDGsのターゲットの解釈次第では、個人レベルでの取り組みでもSDGsに対する貢献は十分可能です。

以下のターゲットをご覧ください。

2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。

※出典元:農林水産省(SDGsの目標とターゲット)

このターゲットは、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」のターゲットです。
一見すると抽象的に思えるため、自社でどう解釈して取り組めばよいのか分からないかもしれません。

その一方で、身近な誰か・自分が暮らしている地域の誰かが、食べ物が十分になくて苦しんでいる状況を改善する方向で考えてみると、打てる手はいくつか存在します。
一例として、大阪市東淀川区にある西淡路小学校の家庭科室で、月・水・金と朝ごはんを1食50円で子供たちに提供している「朝ごはんやさん」は、食事を作っている方々がボランティアで活動しています。

自社では積極的にチャレンジできない分野であっても、社員個人が何かSDG’sに関する取り組みをスタートさせたいと考えた際、企業として休日・勤務時間を調整するようなサポートをする形であれば、無理なくできるかもしれません。
やがて、社員の活動が地域や社会に評価されれば、間接的にその社員を雇っている企業も評価される可能性は十分あります。 

DXによって達成できる目標もある 

SDGsの中には、DXによって達成できる目標も数多く存在します。

目標8「働きがいも経済成長も」では、以下のようなターゲットがあります。
2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
※出典元:農林水産省(SDGsの目標とターゲット)

代表的な例の一つが、農業分野と福祉分野が一体となって農業に取り組む「農福連携」です。
その現場で注目されている栽培方法の一つが「水耕栽培」で、計画的に栽培できる分、担当できる作業に制限がある障害者・高齢者でも取り組みやすい傾向にあります。

屋内で農作物を栽培する水耕栽培は、LEDライト・水・液体肥料によって農作物を栽培するため、天候に左右される露地栽培に比べて、障害者・高齢者が作業しやすいという特徴があります。
露地栽培・ビニールハウス栽培に比べて、イレギュラー対応や複雑な作業・力仕事を求められる機会が少ないため、担当者の作業適性を考慮しながら担当作業を割り振れます。
AI生育状況管理システムを使って、不良苗を判定する技術も進化しており、農作物の安定供給という観点からも注目される栽培方法です。

障害者・高齢者を活用して問題改善を図るアプローチは、SDG’sのターゲット達成に大きく貢献することでしょう。 

SDGsのターゲットをチェックする際の着眼点 

実際に、自社でSDG’sのターゲットを絞り目標達成に向けて行動するには、着眼点が重要です。
以下に、取り組むターゲットをチェックする際に大切な、3つの着眼点についてお伝えします。 

自社で貢献できそうな分野は何か? 

SDGsでは、自社または他社が単独で世界の現状を変える壮大な試みではなく、むしろ自社の立場で無理なくできることを模索することが重要です。
そのため、自社で貢献できそうな分野は何かを考えてターゲットを絞ることが、自社の経営に負担をかけず目標を達成することにつながります。

SDGsにおいても、目標達成のベースとなるのは本業であるべきで、自動車販売なら自動車に関連すること・海運業なら船や海に関連することからターゲットを探すのが自然です。
全社用車にハイブリッド車を採用してガソリン消費量を削減する、フェリーの定温定湿の輸送環境を利用して梱包材不要を実現するなど、自社の環境・特性を活かした方向性でターゲットにフォーカスする形です。

自社で改善しなければならないことは何か? 

貢献とは真逆のアプローチとして、自社の現状を鑑みて改善が必要なケースを考えるのも、SDGsのターゲット達成につながる着眼点と言えます。
会社全体で残業削減とパフォーマンスアップの両立が課題となっている場合は、そもそも残業がなぜ生まれるのかにフォーカスして、新システムの導入・ワークスタイルの改革に乗り出すことがSDG’sに結びつくかもしれません。

Web会議システムを導入するだけでも、リモートワークで社員の出勤負担を減らしつつ、出張等の手間などを大きく省けます。
車通勤をしている社員の排ガス削減も期待できますから、社員の意識を変革する費用対効果は高いものと推察されます。 

自社が実践することでどのように評価されるか? 

日本には古くから「三方よし」という言葉があり、近江商人よろしく「売り手よし・買い手よし・世間よし」を事業によって実現することは、SDGsの目標達成に通じる部分があります。
SDGsの目標達成につき、古くから日本で培われてきた「三方よしの精神を世界に広める」という観点からとらえてみると、自社が目標達成に向けて実践したことが「他社・社会・地域からどのように評価されるのか」を考えて判断する着眼点が生まれます。

任天堂を世界に名だたるゲームメーカーに育て上げた故・山内溥元社長は、自社を支えてくれた地域に貢献する観点からマリナーズ買収を行った結果、現地の人々から感謝されています。
企業経営の観点からSDGsに向き合う際は、自社の行動が将来にわたり高い評価を得られる可能性も考慮することが大切です。 

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SDGsをDX推進によって実現しようとする企業実例 


続いては、SDG’
sをDX推進によって実現するケースについて、具体的な企業の実例をご紹介します。
取組み方は業種・職種により様々ですが、自社との共通項が見つかれば、ターゲットの方向性も定まりやすくなるでしょう。 

事例1:現場の省力化 

建設機械・産業機械メーカーの前田製作所では、現場の自動化に貢献するICT建設機械を取り扱っています。
建設工事の一連の工程で3次元データを活用することにより、安全性・生産性の向上とともに労働力不足の解決にも貢献しています。

他には、凍結危険個所で設定に応じて凍結防止剤を自動散布する装置も取り扱っています。
北海道・東北などの地方では、すべり止めのために砂をまく地域がありますが、人力での対応が難しい地域では重宝する装置です。 

事例2:オンラインヘルスケアサービス 

携帯電話3大キャリアの一つであるソフトバンクは、同社構築のスマートフォンアプリ「HELPO」を活用して、医療費の高騰という課題に対応しています。
医療にかかるコストの大部分が症状の重症化後にかかっていることに着目し、病気になる前の段階からチャット形式で相談ができるようにすることで、医療費の削減に貢献します。

福利厚生を目的としてアプリを導入すれば、ちょっとした体調不良も気軽に相談できるため、社員のパフォーマンス向上が期待できます。
従業員の健康問題を解決しつつ、社会問題の解決にもアプローチできるのは、まさにDX推進の理想形と言えるでしょう。 

事例3:スマート農業 

農業分野は、農業人口の高齢化や後継者の減少という問題を抱えており、耕作放棄地の面積も増加傾向にあります。
そこで、深刻な労働力不足の解消のため、スマート農業が注目されています。

スマート農業とは、ロボット技術・ICT等の先端技術を活用し、超省力化・高品質生産等を可能にする農業のことです。
具体例としては、北海道大学・ヤンマーが合同研究中の無人で畑を耕す「スマートトラクター」や、きゅうりの自動選果の実現を目指すGoogle提供オープンソースのAIエンジン「TensorFlow」などがあげられます。 

まとめ 


SDG
sをDXによって実現するためのアプローチは、企業によって様々です。
しかし、焦点を絞らなければ、思ったような成果を得ることは難しいかもしれません。

取り組みの方向性を考えるにあたり重要なのは、目標ごとのターゲットです。
多方面に目を向けるよりも、自社が置かれた状況を踏まえた上でターゲットを選んだ方が、無理なく取り組みを継続できるでしょう。

<記事全体の参考サイト>
https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/17goals/
https://prdx.co.jp/visions-prdx/sdgs/
https://www.brainpad.co.jp/doors/news_trend/dx_sdgs/

<段落「SDGsのターゲットとは」の参考サイト>
https://www.youtube.com/watch?v=1DYaanDJvRs
https://smartagri-jp.com/management/285
https://smartagri-jp.com/smartagri/157
https://smartagri-jp.com/smartagri/20

<段落「SDGsのターゲットをチェックする際の着眼点」の参考サイト>
https://www.kuriyama-truck.com/sdgs
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000076572.html
https://www.sustainable-keiei.com/study/01howto-sdgs.html
http://sanpoyoshi.net/
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO60718370W3A001C1000000/
https://t011.org/company/110585.html

<段落「SDGsをDX推進によって実現しようとする企業実例」の参考サイト>
○事例1
https://www.maesei.co.jp/corporate/sdgs/
https://gazoo.com/column/daily/17/12/30/
○事例2
https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202102/dx-sdgs/
https://www.softbank.jp/biz/services/hr-tech/helpo/
○事例3
https://www.maff.go.jp/j/study/nouti_seisaku/03/pdf/ref_data2.pdf
https://smartagri-jp.com/smartagri/14

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