ガバメントクラウド(政府クラウド)導入メリットとは?民間企業にも応用できる仕組みや事例を解説!

昨今、多くの企業において、グループ間でばらばらに運用されていたシステムを標準化しようという試みがなされています。
システムを標準化させることで、データの有効活用が可能になったり、業務が効率化したりと様々なメリットを得ることができます。
このようなシステム標準化の取り組みを政府、地方自治体の規模で実現させようというのが「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」です。

ガバメントクラウドの動向は、IT業界の中でも大きな関心事の1つとなっています。

そこでこの記事では、ガバメントクラウドの概要や仕組み、メリット、先行事業などについて分かりやすく解説します。 

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ガバメントクラウドとは 

ガバメントクラウド(Gov-Cloud)とは、政府が用意するクラウドサービスの利用環境です。
中央官庁および各地方自治体は、これまで独自にシステムの構築、運用を行ってきました。
ガバメントクラウドを活用することで、これまでばらばらに整備がなされてきた行政システム(住民基本台帳や選挙、税など)の標準化を実現することができます。

令和3年度から段階的な移行を経て、令和7年度末には、原則すべての地方自治体の基幹業務システムがガバメントクラウドに移行される計画です。
また、今後は独立行政法人、準公共分野(健康・医療・介護、教育、防災など)等の情報システムについてもガバメントクラウドを活用することが検討されています。 

ガバメントクラウドの仕組み 

ここでは、ガバメントクラウドの基盤となるクラウド技術とガバメントクラウドのイメージを解説します。 

そもそもクラウド技術とは 

ガバメントクラウドの基盤となっているのが「クラウド(クラウド・コンピューティング)」という技術です。
クラウドとは、インターネットなどのネットワークを通じて、サービスを提供する形態のことです。

非クラウドの環境下では、ユーザーがサービスを利用するためには、サーバーを構築したり、専用のソフトウェアをインストールするといった作業が必要になります。
一方、クラウドでは、ユーザー側でサーバーやソフトウェアを用意しなくても、ネットワークを経由し、IDやパスワードによる認証を行うことでサービスを利用することができます。

クラウドは提供するサービスにより、以下の3つに分類されます。  

分類  提供サービス 
IaaS (Infrastructure as a Service)  デスクトップ仮想化や共有ディスクなど、ハードウェアやインフラ機能 
PaaS (Platform as a Service)  仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなどアプリケーション実行用のプラットフォーム機能 
SaaS (Software as a Service)   電子メール、グループウェア、顧客管理、財務会計などのソフトウェア機能 

(参考:総務省『クラウドサービスとは?』)

コストダウンや業務効率化といった観点から、クラウドサービスを利用する企業は年々増加傾向にあり、今後もさらなる普及が予想されています。 

ガバメントクラウドのイメージ 

下記は、ガバメントクラウドのイメージ図です。 

(出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 「地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(案)」,p2)

開発事業者は、基幹業務等のアプリケーションをガバメントクラウド上に構築することができるようになります。(アプリケーションの要件や手続等は、今後検討・提示される予定となっています。)
また、複数の開発事業者が基幹業務等のアプリケーションの構築を行い、地方自治体は、それらの中から利用したいものを選択することが可能です。

さらに、地方自治体は、従来のように自らサーバやOS、ミドルウェア、アプリケーション等のソフトウェアを所有する必要がなくなり、基幹業務等をオンラインで利用できるようになります。 

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ガバメントクラウドの4つのメリット 

ここでは、ガバメントクラウドを活用することで、地方自治体が得られるメリットを4つ紹介します。 

構築・運用コストが削減される 

サーバーやネットワーク機器などの準備が不要になり、イニシャルコストを大きく抑えることができます。
さらに、システム導入後のサーバーの監視や各種機器のメンテナンスといった作業も不要になるため、ランニングコストの削減を実現することができます。
また、開発事業者がガバメントクラウド上で開発したアプリケーションを、自治体が選択できるような仕組みにすることで、競争原理が働き、コスト削減効果が期待できます。 

柔軟な拡張・迅速な構築が可能になる 

システム構築後であっても、システム負荷やアクセス数の増加などに応じて、容量を柔軟に拡張させることができます。
また、システム構築にかかる時間も短縮できるため、新しいサービスを住民へスピーディーに提供することが可能になります。 

セキュリティが強化される 

各自治体が個別に行ってきたシステムのセキュリティー対策は、ガバメントクラウドがまとめて行うことになります。
したがって、単一の自治体では講じることが難しい、最新のセキュリティー対策も導入可能になります。 

データの連携が容易になる 

クラウド上でデータが一括管理されるため、政府、自治体間のデータ連携が容易となります。
このことは、これまで煩雑だった行政手続きを簡略化させ、住民や職員の負担を軽減させることにつながります。 

基幹業務システムに関する先行事業 

自治体の基幹業務システムのガバメントクラウドへの移行に向けて、令和3年度から先行事業が実施されることが決まりました。
先行事業では、クラウドや回線が安心して利用できることはもちろん、移行方法や投資対効果を検証することを目的としています。

先行事業に関して自治体に対する公募を行ったところ、52の自治体からの応募があり、審査の結果、計8件の自治体が採択されました。
たとえば、神戸市は、政令指定都市であり、他の大規模団体へのモデルとなりうる点などが評価され、採択されました。
また、盛岡市は、システムをハウジング、自庁サーバで運用しており、クラウド利用の実績がない団体のモデルケースとして有用である点が評価され、採択されました。

この他にも、下記の自治体が採択されています。
・倉敷市(高松市、松山市と共同提案)
・佐倉市
・宇和島市
・須坂市
・美里町(川島町と共同提案)
・笠置町

検証作業中は、サービスへの影響が出ないよう既存システムを平衡稼働させつつ、令和4年度末を目途に本番環境への移行が行われる計画です。
なお、先行事業を実施するにあたり、利用するクラウドサービスとしては、米アマゾン・ドット・コム傘下のアマゾン・ウェブ・サービスが提供する「Amazon Web Services(AWS)」と、米グーグルが提供する「Google Cloud Platform(GCP)」の2つが採択されました。 

まとめ 

この記事では、ガバメントクラウドの概要やメリット、先行事業などについて解説しました。
ガバメントクラウドの構想が実現することで、政府、自治体の業務の効率化はもちろん、住民もサービスの利便性向上の面で大きな恩恵を受けることができます。

この記事を通じて、ガバメントクラウドが社会に与えるインパクトはとても大きいということがお分かりいただけたかと思います。
政府、自治体の取り組みに期待し、ガバメントクラウド事業の今後の動向に注目してみましょう。 

デジタル庁 | ガバメントクラウド 
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 | 地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(案)
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 | 地方自治体によるガバメントクラウドの活用(先行事業)について
デジタル庁 | ガバメントクラウド先行事業の採択結果について

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