SAP認定コンサルタント資格は、ドイツSAP社が公式にSAPに関する知見・ノウハウを有していると認定する資格制度です。
そのため、SAP認定コンサルタント資格を取得している人は自身が対応できるSAP製品の知識の証明ができ、案件を探すときに有効に働く資格の一つとなります。
本記事では、SAP認定コンサルタント資格に関する情報をわかりやすく、試験の種類や受験方法、難易度、勉強方法、費用等について解説しました。
目次
ERP・SAP領域に関わるコンサルタントが取得すべき資格
ERP・SAP領域に関わるコンサルタントが取得すべき資格の1つが「SAP認定コンサルタント」です。
SAP認定コンサルタント資格とは、ITエンジニアやITコンサルタントを対象にドイツの大手ソフトウェア企業SAP社が認定している資格です。
同資格保有者は、SAPシステム導入プロジェクトにおいて開発や保守・運用等に携わるうえで必要な知見やノウハウを有していると見なされます。
グローバルプロジェクトにおいてもその能力を証明することが可能です。
かなり有用性が高いため、SAPに関するスキルをメインにキャリアを形成していきたい方はぜひ取得しておくことをオススメします。
SAP認定コンサルタント資格の詳細
2024年時点、SAP認定コンサルタント資格は110を超える試験を最大9言語で提供されています。
ちなみに日本語で受けられる資格は50種類を超え、そのうちどれか一つでも取得していればSAP認定コンサルタント資格として名乗ることができます。
SAP認定コンサルタント資格は大枠以下3つのジャンルに分けることができます。
SAP認定コンサルタント資格①:アプリケーションコンサルタント
主に業務系システムの知見を有するSAPコンサルタントを対象とした資格です。
試験に合格することで、企業の会計・サプライチェーン・人事領域における業務プロセスの最適化スキルを有していることを証明できます。
SAP認定コンサルタント資格②:デベロップメントコンサルタント
主にプログラマーを対象とした資格です。合格にはプログラミング技術が必須です。
この試験に合格すると、あらゆるツールや開発手法を用いて様々な企業のニーズに応じたSAPアプリケーションを開発できるコンサルタントであることを証明できます。
SAP認定コンサルタント資格③:テクノロジーコンサルタント
主にインフラエンジニアを対象とした資格です。
試験に合格すると、SAPシステム管理で生じる問題点に関して技術的なアドバイス提供が行えるコンサルタントであることを証明できます。
出典元:「SAP Global Certification 概要」SAP training
SAP認定コンサルタント資格の受験費用
受験費用は以下の通りです。
受験費用は以前に比べてかなりお手頃な価格帯となりました。
かつては、約5万円/1回と高額な試験しか準備されていませんでしたが、先述した通りWEB試験が追加されたことで約8万円/6回とかなり値下げされました。
値下げの背景には、WEB試験採用により受験コストをお幅に削減できたことが最も大きいでしょうが、それだけではないと捉えています。
というのも、SAP社やパートナー企業らが今最も対応に追われている「2027年問題」や「慢性的なSAP人材不足」を乗り切るため、受験環境を整え、受験への障壁を下げたのではないかと考えられます。
受験費用の支払い方法には2パターンあります
● 受験1回/年チケット 約3万円 (会場受験)
● 受験6回/年チケット 約8万円 (WEB受験)
1回分のみ購入する方法と、6回分をまとめて購入する方法があります。6回分購入すると、1回当たり約13,000円とお得です。
SAP認定コンサルタント資格の難易度
SAP認定コンサルタント資格は非常に専門性が高く、SAP社特有の技術に関する高度な知識が求められるため、しっかりとプロジェクトの経験を積み上げたうえで臨まないと合格は難しいと言えるでしょう。
試験は製品における各バージョンや各モジュール別に区分されているため、SAPを触ったことがないと理解できない問題がメインとなっているからです。
同資格の合格ラインは大体7割程度の正解率※です。
例えば、「アプリケーションコンサルタント資格」試験の場合には、80問中63%以上の正答率が合格ラインとなります。
受ける資格によって出題範囲や合格ラインが変動するため、SAP社公式の最新試験一覧よりあらかじめ確認しておきましょう。
本資格は、難易度によって3つの種類に分けられます。
● Associate certification(アソシエイト)
…SAPコンサルタントになるための必要な基礎知識を網羅し、幅広いSAPソリューションの知識とスキルを確実に習得していることを証明できる
● Specialist certification(スペシャリスト)
…アソシエイト認定資格に加えて、特定の役割やそのスキルの知識を証明できる
● Professional certification(プロフェッショナル)
…プロジェクトやビジネスプロセスの知識、SAPのより高度な理解を証明できる
SAPに全く携わったことのないSEやコンサルタントが合格するには難易度が高い資格ですが、しっかりと対策を取ることで独学でも合格は目指せます。
本記事の最後に独学で資格取得を目指す際におすすめの勉強方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
出典元:「Certification Validities 合格難易度」SAP training
SAP認定コンサルタント資格は転職や案件獲得に有利
SAP認定コンサルタント資格を取得していなくとも現場で活躍しているSAPコンサルタントの方は多くいます。
とはいえ、求人募集時にSAP認定コンサルタント資格保有者のみ応募可能な案件があることは事実です。
また、同資格を有していれば、転職や案件獲得の際に3つのメリットがあります。
❷ SAP認定資格が必須の高案件に応募し年収UPを目指せる。
❸ SAPサービスマーケットプレイスから最新の製品情報などを知り知識の習得ができる
上記の理由から将来SAPコンサルタントとして転職や独立をお考えの方はチャンスを潰してしまわないためにも、資格を取得しておくと良いかと思われます。
資格を取得しフリーランスのSAPコンサルタントとして独立を検討している方に是非目を通していただきたいSAP案件についてこちらの記事で紹介しています。
良ければ参考にしてみてください。
SAP認定コンサルタント資格取得数及び取得者数
SAP公式サイトの「パートナー別SAP認定コンサルタント資格取得数」によると、2021年1月時点で資格取得者数は約17,500人に及ぶとのことです。
また、SAP認定コンサルタント資格取得者数は増加傾向にあることが分かっています。
SAPジャパンは2018年から2019年の1年間でSAP認定コンサルタントが2,888人増加したことを発表しており、かねてからの課題であった人員リソースの不足がかなり補充されている状況とのことです。
ただし、SAPジャパンでパートナービジネスを統括する大我猛・バイスプレジデントは「今後必要になるリソースを考えると、(現在のパートナーエコシステムの規模のままでは)将来的に数千人規模で人が足りなくなる可能性はあるが、段階的に埋めていく努力をしていく」ともコメントしており、今後のSAP需要に応じるためSAP認定コンサルタントを積極的に育成していく意向が伺えます。
具体的には、トレーニングメニューの更なる充実に向けた投資の他、SAP ERP デリバリーリソースにおいてはプレジェクトマネージャー、アプリコンサル、テクニカルコンサル、プログラマーといった数多くの職種があるにもかかわらずパートナー企業によって取得数に偏りがあるため、パートナー同士のマッチングによってリソースの最適配置を促していく意向を示しています。
さらに、パートナーの更なる獲得へ向けて活動を継続するほか、SAPビジネスにおいて優秀かつ豊富な実績を有するインド系グローバル大手SIerのリソースを活用していく予定です。
このような背景から資格取得数及び資格取得者数が今後も増加していくことが予想されます。
SAP認定コンサルタント資格の受験方法
SAP認定コンサルタント資格の受験方法は、試験会場へ出向くほか、インターネット経由で受験が可能です。
ピアソンVUEと呼ばれるWEB型試験を採用し手間をかけず受験できます。
TYPEA・Bとありますが、オンラインで受験可能なうえ期間中であれば複数回受験ができるTYPE Bがおすすめです。
TYPE B:オンライン受験
・場所は問わずオンラインで受験可能
・Subscription購入により12カ月間の間で最大6回受験可能(6回中3回まで同一リリース再受験可)
・電話・チャットにて英語で試験監督とコミュニケーションを取る必要あり(テクニカルサポート等も英語)
SAP認定コンサルタント資格の過去問について
SAP認定コンサルタント資格の過去問は、過去問サイトから購入が可能なようです。
過去問を利用して学習したい方は、試験コードをSAP公式サイトで確認し、Googleで「試験コード answer」で検索して過去問サイトから購入しましょう。
なお、実際に受験した際の過去問についてですが、試験終了後に受験した試験内容を再度確認することができない仕組みとなっており、試験問題を持ち帰って復習することはできません。
SAP認定コンサルタント資格取得に向けた独学におすすめの勉強方法
独学でSAP認定資格を取得するには、基本的に試験問題や回答をしっかりと暗記しつつ学ぶことがオススメです。
また、資格取得を目指す際におすすめの学習方法を以下でご紹介しました。取得を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ネットで配信されているSAPトレーニング動画や書籍を活用する
お金をかけずに学びたい方は、ネットで配信されているSAPトレーニング動画や書籍から学ぶ方法がおすすめです。
ただし、無料コンテンツであるため得られる知見も基礎レベルです。
以下でSAP入門者向けのお勧め書籍をピックアップしましたので、参考にしてみてください!
お勧め書籍「よくわかる最新SAPの導入と運用」:ERP, SAP,各モジュールの概要に加え、ABABやSAP全体構造の解説もされており、SAPを体系的に学ぶことができる書籍。SAPエンジニアの方にはまず最初に手に取って頂きたい一冊。
「図解IT担当者のためのSAP ERP入門」:SAPの歴史やモジュールについて細かく解説されているので、まずはモジュールについて理解したい方にお勧め。その他、SAP導入における方法論・ステップについて詳細に記載されている。
「SEのためのERP入門」:SAP導入の際にあらかじめ準備すべきことやPJ稼働中に意識すべき事にフォーカスして述べられている。SEでなくユーザー側が読んでも、プロジェクトにどのように望むべきか理解を深めることができる一冊。
未経験可のSAP案件を取り扱う企業に入社し経験を積む
ITベンダーやIT系コンサルティングファームなどのSAP案件を扱っている企業に入社するというのも1つの選択肢です。
そのような企業に入社した場合には、実務を通してスキルを身に着けることが可能となり高額なコストがかかりません。
また、SAP領域における豊富な知見を持つメンバーから細かにフィードバックを得られるメリットもあります。
SAP社のSAPトレーニングを受講する
SAP社ではSAP入門者からベテラン向けまで豊富にSAPトレーニングが提供されています。
基礎部分を学ぶ上で多少の出費はいとわないという方であれば、SAP社が提供しているe-Learningや試験対策トレーニング動画を購入したほうが良いかもしれません。
5万~10万円ほどの費用がかりますが、必要な情報が凝縮されているのでかなり効率的に学ぶことができます。
ただし、教材は殆ど英語となりますのでその点は留意しておく必要があります。
続いて、実務レベルでのSAPに関する知識を得ることのできるコースの場合には、およそ100万円ほどのコストがかかります。
とても個人で出せる金額ではなく、実際にトレーニングを受ける方の殆どがSAPのパートナー企業に在籍しており企業による人員投資の一貫で受講している印象です。
SAPの公式書籍を使用する
SAP社が公式に発行している書籍を使用して勉強する方法です。
初心者~専門家まで幅広く対応しており、体系的に学びたい方にオススメです。
書籍と電子書籍の2種類がありますが、全て英語で出版されているため、英語が苦手な方にはオススメできません。
SAP認定資格の有効期限
SAP認定資格は有効期限はありません。
しかし資格自体、SAPのシステム・製品とバージョンに依存しているため、自身が取得した認定資格の製品・バージョンが市場から消えてしまうと有効活用できなくなります。
現行の最新認定資格は「SAP S/4 HANA or SAP S/4 HANA Cloud」になるため資格取得の際はご注意ください。
また、認定資格データ保持期間は、最大 10 年間とされています。SAP側で受験者が SAP 認定スペシャリストであることを証明する目的でデータを保管しています。
出典元:SAP社 よくあるお問い合わせ
SAP資格についてのまとめ
SAP製品は種類が多すぎるほどあり、それらが幅広い業務をカバーしているため自身がどの範囲内でどれだけの知見やノウハウを有しているかを客観的に捉えること難しいと言えますが、SAP認定コンサルタントを取得することでクリアに把握する事ができます。
これは自らが再認できるのもそうですが、クライアントや面接官等相手方からでも評価しやすい、つまり自身を売り出しやすい環境が整えられるというメリットがあります。
SAP認定コンサルタント資格は、SAPに関わるコンサルタントやエンジニアにとって一人前と認められるうえでのひとつの指標と言ったところでしょうか。
ぜひとも、今後も需要が見込まれるSAP領域におけるプロフェッショナルを目指して、資格を取得し活躍の場を更に広げていきましょう!
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