教育現場はパンデミックを機にデジタル化(エドテック/EdTech)を伴う変革の時代へ突入しています。
世界のグローバル化の次の波がデジタル化ともいわれている21世紀の現在、文部科学省は2022年から大学教育における実習設備をDXしていく方針です。
学校・スクールのデジタル化がこれまで以上に注目される中、海外ではどのように教育業界DXが進められているのでしょうか。
本記事では、当メディアを運営するストラテジーテックコンサルティング編集部の海外担当が、海外の教育業界DX事例をわかりやすくご紹介します。
目次
教育業界DXの海外トレンド(ユネスコとRewirEd宣言)
フランスを拠点とするユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、教育におけるDXが過小評価されていることを危惧しています。
そして加盟国との連携を強めることで教育現場における不平等を改善しようと動いているのです。
教育は非常に重要なものなので、デジタルトランスフォーメーションは計画的に行われるべきでしょう。
RewirEd宣言は、持続可能な開発に向けた2030年のアジェンダに深く関わる手法で教育のデジタル化を推進していきます。
そのため、宣言の中でデジタルツールが教育機会の平等と公平に役立つ行動指針と原則を提示しています。
宣言は、2021年12月のRewirEdサミットで承認されるでしょう。
参照:)Steering the Digital Transformation/UNESCO
教育業界DXの海外デジタル教育(欧州委員会のデジタル教育行動計画)
欧州委員会(European Commission)が発表しているデジタル教育の行動計画(2021-2027)をみていきましょう。
この行動計画は、EU加盟国におけるデジタル教育を持続的かつ効果的に支援していくものです。
パンデミックにより教育現場はこれまでにない環境に置かれました。
教育とトレーニングの両側面で、デジタル化がこれまでに前例のないほど重要な役割を担っています。
そのため高品質な教育エコシステムの開発が求められているのです。
デジタルに精通した有能な教員・トレーナーと、ユーザーフレンドリーなインターフェース、かつ倫理観も重視されたデジタルツールの融合が必要です。
幼い頃からのデジタル教育にも注目が集まっています。
つまり、デジタルリテラシーの向上が優先事項となっているのです。
参照:)Digital Education Action Plan (2021-2027)/European Commission
教育業界DX海外事例の紹介4選
海外の教育業界DX事例①:海外大学のDX事例(スイス)
スイスのEHL Groupは、大学の価値を高めるDXのケーススタディにおいて「デジタル化は次世代のおもてなしリーダー」と位置づけています。
2020年はパンデミックで大学の閉鎖を余儀なくされる中、オンラインによる授業と試験を再編する必要がありました。しかも一時的な代替案としてではなく、持続可能な形式が求められたのです。
- 海外大学DXプロジェクトの課題
授業のデジタル化を早急に実現すること
- 海外大学DXプロジェクトで実行したこと
閉鎖から6週間以内に7,000時間以上のオンラインレッスンを実施し、2,440回の仮想キャンパス訪問
12週間以内には、90カ国1,545人の学生に12,000のオンライン試験を実施
- 海外大学DXプロジェクトの結果
試験にかかわる人員削減とペーパーレス化、および円滑なオンライン授業の実施を実現
閉鎖から6週間以内に7,000時間以上のオンラインレッスンを実施し、2,440回の仮想キャンパス訪問を実現しました。
12週間以内には、90カ国1,545人の学生に12,000のオンライン試験を行うことになったのです。
この大学DXプロジェクトは、スイスの教育規制当局にオンライン試験を実施する許可を求めることから始まりました。
試験監督も欠かせない存在ですが、試験のペーパーレス化により大幅に少ない人員で実施できることが判明したのは新しい発見です。
オンライン試験を開始したばかりの頃は学生からよく質問が来ましたが、その後受け入れられました。
デジタル学習体験をより魅力的なものにするため、実習にVRを導入したバーチャル授業も実施しています。
授業の評価は友好的であるため、学生たちの知的好奇心を刺激できていると考えられます。
教育業界におけるDXは、教育をより楽しく思い出深いものにすることを忘れてはなりません。
参照:)Boosting a university’s value: a digital transformation case study/EHL Group
海外の教育業界DX事例②:国際教育バリアフリーを目指すEdTech Hub(アジア・インド)
日本の文科省は心のバリアフリー教育を充実させる方針を打ち出していますが、海外では学習支援における教育バリアフリーを目指す活動があります。
所得や家庭学習環境に課題を抱える子どもたちへの教育を、EdTechでイノベーションを目指す取り組みです。
- 国際教育バリアフリーDXプロジェクトの課題
家庭環境や特性により学習支援が必要な子どもへ公平で平等な教育機会を提供すること
- 国際教育バリアフリーDXプロジェクトで実行したこと
子どもの特性に沿ったデジタル支援ツールの導入・活用
- 国際教育バリアフリーDXプロジェクトでの結果
各国で暮らす支援が必要な子どもに適切なデジタル学習支援ツールの提供を実現
たとえば耳が不自由なパキスタンの子どもには、レッスン情報にアクセスしやすいようソーシャルメディアも活用することで仲間とコミュニケーションできる環境を提供しました。
タイでは手話とサブタイトル付き動画授業をとりいれ、課題解決へと動いています。
さらにインドでは視力の弱い子ども向けにズーム機能を強化させたタブレット端末の利用も進んでいます。
バングラデシュでは点字を書くことを支援してくれるアプリも利用されるようになりました。
教員側のデジタルリテラシー不足と、保護者との信頼関係構築にはまだ課題が残されています。
参照:)EdTech for learners with disabilities/EdTech Hub
海外の教育業界DX事例③:生徒のデジタル課題を解決(アメリカ)
ラスベガスのクラーク学区(アメリカで4番目に大きい地区)では、パンデミックを機にデジタル課題へどのように向き合っているのでしょうか。まず32万人の学生にオンライン教育を届ける必要に迫られました。
課題はすぐみつかり、70,000人の学生がデバイスを持っておらず、18,000人がインターネットにアクセスできず、120,000人がまったく応答しなかったのです。
- アメリカの学校教育DXプロジェクトの課題
インターネットへのアクセス環境が整っていない家庭へオンライン授業を届けること
- アメリカの学校教育DXプロジェクトで実行したこと
企業や行政と連携してインターネット環境を整備
- アメリカの学校教育DXプロジェクトの結果
無料のインターネット環境提供を実現
インターネットへのアクセスがない家庭へ、企業と連携して無料で環境を提供することから始まりました。
影響力のある州知事の恩恵も受けて、優先事項として教育DXが進められていきました。
次に仮想ファミリーサポートセンターを設置し、メディアでもPRをして、研修を受けたコールセンターチームが家庭へ補助金の支援についてサポートできる体制を整えました。
プライバシー保護は慎重に行わなければならないため、協力者の身元調査も実施してプロジェクトは進行していったのです。
これはインターネットにアクセスできる家庭の環境整備を最優先させたケーススタディです。
このように一度大掛かりなDXプロジェクトが完了すると、他の地域にも活かせるポイントがみつかるでしょう。
参照:)Case Study: Clark County School District
海外の教育業界DX事例④:グローバル英語教育ESOLのリモート教育プログラム
アメリカで移民を受け入れている語学スクール(カルロスロザリオ国際公立チャータースクール)は、デジタル領域に力を入れています。
授業は主に、英語を母国語としない大人向けの英語教育ESOLです。
英語教育を土台に、コンピューターリテラシーとキャリア教育も支援しているスクールです。
プログラムは英語のほかにスペイン語や料理、芸術、情報技術と多岐にわたります。
多様な生徒が集まり、ビジネス開発助成金の特別支援までも対応しています。
パンデミックでリモート授業になると、生徒側の観点を重視したマニュアルと動画が制作されました。
- 海外リモート教育DXプロジェクトの課題
急なオンライン授業への方向転換に生徒を巻き込むこと
- 海外リモート教育DXプロジェクトで実行したこと
デバイス配布、ヘルプデスク設置、オンライン学習コミュニティ支援、デジタルツールの活用、生徒の声をカリキュラムに反映
- 海外リモート教育DXプロジェクトの結果
語学学校としてだけでなく、先進的でグローバルな学校経営を実現
エンジニアは学生へのデバイス配布にも気を配りました。
トラブルシューティングには母国語対応が必要になりましたが、ヘルプデスクを設置し学生をサポートする体制を整えました。
学生は学習コミュニティに属していてZoomでつながり、オンラインツールを活用しています。
スクール側は常に生徒たちのニーズに応える準備に努め、リモート授業のカリキュラムにも反映されています。
学校側の目標に生徒の声をとりいれ、英会話スクールとしてだけでなく多様な要望に対応できる先進的なグローバル学校となったのです。
参照:)REMOTE ADULT ESOL CASE STUDIES
教育業界DXの課題
国内でも複数の大学や学校でオンライン入試が導入され、試験を監督する学校側も異例の対応となりました。
現場の戸惑いに加えて、教育者側のデジタルリテラシーに差があることが課題のひとつといえます。
また、再循環可能なDXを実現したとしても、特性上から他地域・他校へ展開していくことが難しい業界であることも課題となるでしょう。
目の前の学生だけでなくその背後に存在する保護者、家庭全体との信頼関係構築にも課題が残されています。
相手の言葉にならない声に耳を傾けることが、解決の第一歩となるかもしれません。
教育業界DXの人材教育
小中学生の子どもから「DXって何?」と聞かれたら、どう答えますか?
筆者はある日、唐突にそのような質問を受けました。知的好奇心に満ち溢れた小学校6年生の女子児童からの問いかけでした。
その場の回答がもっと良いものにできたのではないかと反省の気持ちを込めて、子ども向けDXの説明について触れておきます。
まず筆者の大好物でもある「ミルフィーユ」ケーキを想像してもらいましょう。
手作りすると大変ですが、何層も積み重なる生地の間には、色とりどりの様々なかたちのフルーツが埋まっているかもしれません。
DXもすべて人力でするには大変な苦労が必要で、その構造はミルフィーユと同じくたくさんの層(レイヤー)から成り立っています。
生地とクリームや果物が接する部分があるように、人とデジタルが接するのです。
人間もたんぱく質を基にしたある種のコンピューターと捉えると、より理解しやすいかもしれません。
そして両方(生地とクリーム)を一緒に口にすることで、新しい価値(味)が生まれるのです。
もっといえば、食べた人がお客様であり満足してもらえて、ケーキをつくる際にでるゴミを資源として再利用できれば、循環可能な社会の実現へとつながっていきます。
DXとは、このように多くのレイヤーを人類学者のフィールドワークのように行ったり来たりすることで、自らの立ち位置を俯瞰することでもあります。
欧州委員会のデジタル教育行動計画にもある通り、幼い頃からのデジタル教育が将来のデジタル人材教育へと連鎖していくのでしょう。
教育業界DXの海外事例まとめ
海外の教育業界DXの事例をみてきました。
デジタルリテラシーや信頼関係が重要な意味を持つ教育業界DXを本格的に推進するにあたり、デジタルに強い教育DXコンサルタントやエンジニアが求められています。
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