DXにAIを活用した海外医療業界の事例3選!メリットや課題も解説

DXの推進にはAI(人工知能)、特にディープラーニングなどの最先端のテクノロジーを活用して、新たな価値を創出できるかどうかが鍵です。
しかし、AIはDXを成功させるための手段のひとつに過ぎません。

DXにおいて、AIの活用できる分野や方法を十分に見極めた上で導入することが求められるでしょう。
本記事では、医療分野のDXにおいて、AIを活用した海外事例やAIを活用するメリットや課題まで説明します。

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DXにAIを活用した海外医療業界の事例3選

日本ではプログラム医療機器(SaMD)の承認を担当する厚生労働省にIT人材が少なく、審査に多くの時間を要するため、AI医療機器は日本よりも海外が先行しているという現状があります。
今後、日本のプログラム医療機器の承認制度が改善されることに期待を寄せつつ、先行する海外のAI活用事例を紹介していきますので、ご参考ください。

Verily Life Sciences

アメリカのVerily Life Sciences社はGoogle社との共同研究で、ディープラーニング(深層学習)アルゴリズムを利用した網膜眼底画像の解析によって、心疾患リスクを予測できることを示しました。
網膜眼底画像に写し出された目の血管を分析することで、性別や年齢、喫煙の有無などがわかり、さらに心血管リスクの予測も可能だということです。

メリット

網膜眼底画像の解析を利用するメリットは、以下の通りです。
・体に負担をかけず迅速かつ安価な検査が実現
・心血管疾患の早期発見が可能

従来の心血管の疾患を判断する方法は、冠状動脈CTスキャンという高度な検査や、患者の血液サンプルを利用する診断を行いますが、検査や結果が出るまでに時間がかかり、体にも負担がかかるものでした。
しかし画像分析を利用することにより、体にも負担をかけず迅速に検査ができるようになりました。
また、自覚症状がなく手遅れになる心疾患を、AIによってリスクの段階で予測できるようになり、早期に対策することが可能となりました。

課題

網膜眼底画像の解析についての今後の課題は、以下の通りです。
・網膜眼底画像解析の眼疾患の診断への応用
・対象疾患の範囲を広げたソリューションの構築

2016年12月から現在に至るまで、Verily Life Sciences社とニコン社との協業で、糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫による失明リスクの低減を目的としたAIスクリーニングの開発が進められています。
このAIを医療現場のシステムに組み込むことにより、検眼後に速やかなスクリーニング結果の提供が実現することでしょう。

現在も数万枚に及ぶ眼底の高解像度画像を元に、信頼性の高い読影センターからの画像判定を使用して、アルゴリズムをトレーニングしているとのことです。
今後は、上記のような対象疾患の範囲を広げたソリューションの構築により、さまざまな病気の早期発見が期待されます。

参照:
https://japan.cnet.com/article/35115000/
https://www.healthcare.nikon.com/ja/business/overview/

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Atomwise

アメリカのAtomwise社は、創薬分野におけるAI活用を推進しています。
コンピューター上で薬の候補となる化合物を選別する「バーチャルスクリーニング」のプロセスで、従来は多くの時間を要しましたが、同社が開発したAtomNetにより大幅な時間短縮と費用削減に成功しています。
創薬にAIを活用することで、開発期間を4年短縮し、開発費用を600億円削減(1品目あたり)する効果があると言われています。

メリット

AtomNet活用のメリットは、以下の通りです。
・創薬における開発期間の短縮や開発費用の削減を実現

従来の創薬における実験手法は人間のエキスパートによる“匠の技”に大きく頼っていましたが、良い新薬の候補が見つかることは奇跡に近かったと言われています。
その“匠の技”をAIに置き換えることで、化合物を迅速にコンピューター上で特定できるようになり、良い新薬の候補を短時間で見つけ出すことが可能になりました。

例えばAtomNetには、エボラ出血熱の研究を他社と共同で実施し、既存の医薬品7000点が病原体に有効かどうか、1日足らずで調べ上げたという実績があります。
同社はさらに新しい治療方法を必要とする疾患に対して、AIを活用して解決方法を示していくことでしょう。
AIの活用が創薬の手法を大きく変え、多くの新薬が効率的に開発されていくことにより、医療の進歩が加速することに期待が高まります。

課題

AtomNetの今後の課題は、以下の通りです。
・新薬の実用化には臨床や治験の分野においても効率化が求められる

せっかく新薬の候補が短時間で見つかったとしても、臨床や治験の分野がボトルネックとなり、新薬が実用化されるまでに多くの時間が必要になります。
他社の事例となりますが、カリフォルニア州のAIスタートアップDeep 6では、数ヶ月を要した臨床試験の被験者探しを数分に短縮することに成功しています。

特定の臨床試験に対して最適な被験者を探す必要がありますが、そのためには患者の健康状態に関する情報が必要です。
異なるシステムへの情報の分散により被験者探しに時間がかかっていましたが、Deep 6はAI技術を用いて異なるシステムに蓄積されたデータをまとめ、研究者が特定の疾病をフィルタリングできるよう分類しました。
12名の被験者を探すのに6ヶ月かかった作業が、Deep 6のソフトウェアでは、数分で80名の候補者を抽出したというケースも報告されています。

また、治験に関しても、情報検索・収集の自動化にAIを活用する取り組みが各地で進んでいるようです。
今後のAtomNetにおいても、新薬開発から実用化までのプロセスでさらなる効率化が期待されています。

参照:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/33/3/33_230/_pdf
https://forbesjapan.com/articles/detail/31315

CELVAS

韓国のCELVAS社は、健康診断データから4年以内の発症確率を予測するSelvy Checkupを開発しました。
対象となる疾患は、6大がんや心臓疾患、脳卒中、糖尿病、認知症など10疾患です。
ディープラーニングや機械学習を組み合わせた独自のアルゴリズムで、疾患ごとの発症確率の数値を示し、状態を「正常」「注意」「危険」「高危険」の4段階で評価します。
サービスの提供方法は、オンプレミスの他に、Web、API、クラウド型のSaaSなどです。

メリット

Selvy Checkup活用のメリットは、以下の通りです。
・10疾患における4年以内の発症確率を予測可能
・統計分析法よりも平均10%以上高い予測精度を実現

高精度な発症確率の予測により、早期に治療したり、生活習慣を見直したり、定期的に検査を受けたりといった対策が可能となり、症状の重篤化を防ぐことができます。
健診で得られる情報を入力するだけで発症する確率が予想できるため、手軽に疾患の早期発見や健康管理ができます。

Selvy Checkupの活用によって、より適切な治療方法を提案できるようになり、集客力アップを期待できます。
このサービスは日本でも提供されていますから、広く用いられることを期待しましょう。

課題

Selvy Checkupの今後の課題は、以下の通りです。
・対象となる10疾患以外への対応が求められる

今後は対象疾患をさらに増やし、多くの疾病の早期発見によって、今後の医療に大きく貢献することが期待されます。

参照:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000033347.html

DXにAIを導入する際の注意点

一般的に見てAIを導入する際に注意すべき点はいくつかありますが、ここでは特に医療業界で注意すべき点として「AIによる判断ミス」について解説します。

AIの判断は完璧ではなく、判断ミスをすることがありますから、注意が必要です。
AIに学習させるデータを慎重に選ぶだけでなく、サンプルデータを適切に分類することや、特徴の偏りを補正する方法にも注意を向けることが必要です。

例えば、人間の目では判別ができないようなデータのノイズが画像に乗っていることで、AIの画像解析において判断ミスにつながる可能性があります。
AIの精度を高めていくことは可能ですが、100%になることはありませんから、AIもミスをすることがあると認識しておくことが大切です。

まとめ

本記事では医療機器において日本より先行している海外のAI活用事例を紹介し、メリットや課題、注意点などを解説しました。
DXの目標やAIの役割を明確化すると共に、AIを理解して使いこなすことのできる人材の確保・育成に取り組むことが重要な課題であることを認識しながら、DXを推進していきましょう。

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