AI将棋と人間はどっちが強い?ディープラーニングなどの技術や歴史について詳しく解説

本記事では、AI将棋の概要や開発の歴史、ディープラーニングなど使用されている技術について解説します。

現状AIと人間のどちらが強いのか、AI技術に興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。

AI技術は日々進化しており、囲碁や将棋などルールが複雑なゲームにも導入が進んでいます。

AIがどのように考えてゲームを進めているのか、人間はAIに勝てるのか詳しく解説します。

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AI将棋とは

AI将棋とは、機械学習によって最適な打ち手を計算し、人間のプレイヤーと対戦したり、解説に使用したりできるソフトウェアです。

棋譜の学習や戦局分析にも用いられています。

将棋は駒によって動きが異なることや、取った相手の駒を自分の駒として利用できることから、ゲーム中に現れる局面の数がオセロやチェスより多いとされています。

その分計算が複雑になるため、将棋AIの開発も難しいと言われていましたが、現在ではプロに勝利する将棋AIも登場しました。

主なAI将棋として、水匠やdlshogiなどが挙げられます。

参照:
「将棋AIとは? 藤井七冠も活用する技術の進化と応用可能性を探る」株式会社 日経BP 日経ビジネス電子版
「”チェスよりも将棋のほうが難しい”は本当か?」株式会社ダイヤモンド社 DIAMONDonline

AI将棋に使用されている技術

次にAI将棋に使用されている技術について解説します。

AI将棋はどのように打ち手を考えているのか知りたい方は参考にしてみてください。

 αβ法
 モンテカルロ木探索・ディープラーニング

それぞれ詳しく解説します。

αβ法

αβ法は、ゲーム木で分岐した各ノード(枝)にたいして評価関数で評価値を定め、最適な選択肢を選ぶアルゴリズムです。

ゲーム木とは、自分の手番で取りうる選択肢とそれに対する相手の打ち手をパターンごとに、木の枝のように分岐させていく図です。

αβ法では、α値を相手の手番で考えられる自分の損失を示す値β値を自分の手番で考えられる利益を示す値とし、α値が最小、β値が最大となるノードを選択するように設定します。

この時、計算効率を高めるために選択することがないと判断できる値のノードについて、それ以降の計算を省略するミニマックス法が採用されています。

従来から多くの将棋AIに活用され、現在も水匠などの将棋AIに取り入れられている手法です。

参照:
「ディープラーニングは今までの将棋AIとどう違う?HEROZエンジニアが開発した将棋AIが電竜戦で初優勝した理由」ログミー株式会社 logmi Tech
「アルファベータ法(αβ法)とは?アルゴリズムや活用場面をわかりやすく解説」 株式会社Jitera JITERA
「【将棋AI】「将棋AIで学ぶディープラーニング」を読む♪~将棋AIの理論」Qiita株式会社 Qiita

モンテカルロ木探索・ディープラーニング

モンテカルロ木探索とは、ランダムに手を打って将棋を進め、勝利に繋がった手であれば報酬を与えるといった学習を何度も繰り返すことで最適な打ち手を探索する手法です。

膨大な数の打ち手について試行し、良い選択肢を記憶する必要があるため、開発には高い性能のコンピューターが必要です。

学習方法が近いことから、強化学習とも関連性が深いと言われています。

モンテカルロ木探索で行った打ち手については、盤面を画像認識し、ディープラーニングを用いた評価関数によって評価を行っています。

ディープラーニングを取り入れることによって評価の精度を高め、強力な将棋AIを作り上げています。

モンテカルロ法は、円周率を計算で求める方法として有名です。

正方形の中に正方形の辺と同じ直径を持つ正円を描き、正方形の中にランダムに点を打ちます。

打たれた点が正円の中に収まる確率が、点を打つ作業を無限回繰り返すと円周率(π≒3.14)に収束するというものです。

株価や販売予測など、不確実な事象について起こりうる結果を推定する目的などで用いられています。

参照:
「モンテカルロ木探索」株式会社 zero to one zero to one
「将棋におけるMCTS(モンテカルロ木探索)の強さ」株式会社はてな はてなブログ コンピュータ将棋動画勢!
「ディープラーニングは今までの将棋AIとどう違う?HEROZエンジニアが開発した将棋AIが電竜戦で初優勝した理由」ログミー株式会社 logmi Tech
「スマートフォンで撮影された将棋局面をAIが認識」東京農工大学

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AI将棋の歴史

AI将棋の歴史は意外と長く、1967年に日立製作所が自社の大形計算機に詰め将棋を解かせたことから始まります。

その後、1975年に早稲田大学が世界初の指し将棋のコンピューターシステムの開発に成功します。

50年以上前からAI将棋の歴史は始まっていました。

2005年には、プロ棋士などの棋譜を大量に読み込んだBonanzaがインターネット上で無料公開され、話題を集めます。

Bonanzaは、第16回世界コンピュータ将棋選手権で優勝、第21回大会で準優勝とそれまでのAI将棋とは一線を画す好成績を修めました。

2007年にBonanzaは、当時の竜王渡辺明氏と特別対局を行います。

結果はBonanzaの敗北に終わりましたが、中盤まで優勢に進めたこともあって世間を賑わせました。

その後、Bonanzaを基にした「Ponanza」や「ボンクラーズ」といった将棋AIも次々開発されるようになり、AI将棋が盛り上がりを見せます。

そして2017年には、Ponanzaが第2期電王戦にて佐藤天彦叡王に勝利し、AI将棋が名人に初勝利を果たしました。

参照:
「“人知を超えた将棋AI“ 将棋界に学ぶ人とAIの共存の未来」株式会社トライエッティング TRYETING
「藤井聡太の名人防衛戦を前に考える。人の脳が辿り着くのはAIの楽園か」株式会社トライエッティング TRYETING
「日立評論1967年8月号:HITAC5020E/F 電子計算機システム」株式会社日立製作所
「Bonanza 世界コンピュータ将棋選手権で優勝した将棋ソフト」株式会社インプレス 窓の社
「第2期電王戦二番勝負、PONANZAの2連勝で幕を下ろす」公益社団法人 日本将棋連盟
「第2期電王戦結果 電王・Ponanzaが佐藤名人に勝利!」HEROZ株式会社 HEROZ

AIと人間はどちらが強い?

ここからは現在AIと人間のどちらが強いのか、将棋だけでなくオセロやチェス、囲碁なども含めて解説します。

AIは人間を追い越すほど強くなったのか、気になる方は最後まで読んでみてください。

オセロ

前段で解説したようにAIは打ち手のパターン数が少ないほど計算に使う容量が小さく、開発も行いやすくなります。

ルールがシンプルで打ち手のパターンが少ないオセロは比較的早期に進化してきました。

1997年にNEC北米研究所が開発した「ロジステロ」が、当時の世界チャンピオン村上氏を6連勝で打ち破っています。

このことから、オセロにおいてはAIの方が強いと言えるでしょう。

参照:
「AIの記事」村上健のオセロ日記 株式会社ライブドア livedoor Blog
「オセロプログラムと人間はどっちが強いのか?ロジステロとの戦い」オセロ・リバーシプログラミング講座 ~勝ち方・考え方~
「人間VSコンピュータオセロ 衝撃の6戦全敗から20年、元世界チャンピオン村上健さんに聞いた「負けた後に見えてきたもの」」株式会社 エスディーピー SDP

チェス

チェスもAI開発が過去から行われています。

1989年にディープ・ソートと呼ばれるAIが当時の世界チャンピオンに挑戦しました。

結果は2戦2敗で、まだ人間の方が強かったようです。

しかし、1996年に行われたリベンジマッチではディープ・ブルーと呼ばれるAIが6戦1勝3敗2分けと、結果はAIの負け越しですが、6戦のうち1勝を獲得し、大きな話題を呼びました。

2005年にはチェスAIが5勝1敗6分けと人間に大きく勝ち越すまでに進化し、これ以降チェスAIが人間に負けることはなくなりました。

2008年頃からは人間がAIにハンディキャップをもらって戦っています。

このことから、現在はAIの方がチェスにおいて人間よりも強いと言えるでしょう。

参照:
「チェスコンピュータvs人間の歴史(世界チャンピオン参戦時代)」今日はチェスざんまい
「チェスコンピュータvs人間の歴史(機械優勢時代)」今日はチェスざんまい

囲碁

囲碁AIは2016年に大きなニュースになった「アルファ碁」が有名です。

当時世界トッププレイヤーの1人だったイ・セドル氏が、Googleのグループ企業であるディープマインド社が開発した「アルファ碁」に1勝4敗で負け越したことが大きな話題になりました。

それまでの囲碁AIはせいぜいアマチュア高段者レベルでしかなかったため、このニュースは大きく扱われ、ディープラーニング技術を広く知らしめました。

そこから囲碁AIは進化を続け、人間が太刀打ちできないレベルにまで成長を遂げます。

しかし、2023年にアメリカのアマチュア有段者が、囲碁AIの学習における盲点を突く先方で15戦14勝と大きく勝ち越しました。

彼が行ったのは、囲碁AIが打ち手を探索する中で切り捨てられる手を打ち続けることで、AIが想定していなかった事態を作りだして翻弄するという戦法です。

人間との対局では有効な打ち手ではありません。

この対局によってAI学習の欠陥が浮き彫りになりました。

実力的にはAIに分がありますが、まだ完全に人間が負けている訳ではありません。

参照:
「AIの「人間超え」、その時トップ囲碁棋士は」株式会社 日経BP 日経ビジネス電子版
「最強の囲碁AIに圧勝する人物が登場、AIの弱点を突いて人類が勝利したと話題に」株式会社OSA Gigazine
「【AIと囲碁】未来を変えた日本の伝統競技」日本棋院 囲碁がわかると広がる世界

将棋

将棋においては前章で紹介したように、2017年にPonanzaが第2期電王戦にて佐藤天彦叡王に勝利し、AI将棋が名人に初勝利を果たしています。

また、同年にコンピュータソフトとプロ棋士が対局する電王戦が、人間の負け越しで終了しました。

このことから、AI将棋と人間ではAIの方が強いと言えるでしょう。

現在では藤井聡太氏をはじめとする棋士がAI将棋と向き合い研究を深めるなど、実力を伸ばすための道具として活用しています。

参照:
「棋戦一覧」公益社団法人 日本将棋連盟
「棋士たちはAIとさらなる高みへ 藤井聡太は「人間とは違うレベルに到達しつつある」」NHK

まとめ

今回はAI将棋と人間のどちらが強いかや、ディープラーニングなどの活用技術について解説しました。

ChatGPTなどAIが急速に進化する中でAI将棋も着実に強化され、人間が勝利できないほどになっています。

将棋やオセロのような盤面にプレイヤーが判断を行うために必要な情報が全て出揃っている完全情報ゲームだけでなく、麻雀やポーカーなどの不完全情報ゲームにおいてもAIは進化しています。

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